2023年8月アーカイブ

こんにちは、アヴェニューセルクリニック院長の井上啓太(いのうえけいた)です。

今回は、再生医療を受診される患者様からよくいただく質問について回答します。

このブログを最後まで読んでいただくと、幹細胞治療に対する理解が深まっていくと思います。

 

Q.細胞治療が受けられないことはありますか?

こちらは、よく頂く質問になります。

再生医療を行うにあたって、適応基準除外基準という基準があります。

 

【適応基準】

適応基準というのは、どういう病気だったら(治療が)できるか?という基準になります。

例えば、脳梗塞後遺症・変形性関節症・肌の老化(シミ・シワ・たるみ・毛穴など)の場合には幹細胞の治療が受けられます。

適応基準を満たしていない場合には、再生医療を受ける事ができません。

 

【除外基準】

その一方で除外基準というのがあります。

除外基準に当てはまると、こちらも再生医療が受けられなくなります。

 

除外基準でよくあるのが、高度な貧血です。

幹細胞を育てる際に血液が必要になりますが、その血液を十分に取ることができなくなる可能性があります。

もう一つは癌です。

悪性腫瘍があるという方は、再生医療を受けることができません。

除外基準としては高度な貧血と悪性腫瘍の2つが主にあります。

 

適応基準除外基準.png

Q.年齢によって効果に差はありますか?

当院では、90歳以上の方の幹細胞を育てる技術がありますので年齢による除外基準はありません。

ただ、厚生労働省に届け出ている治療計画上、未成年の方はお受けすることはできません。

再生医療の法律についての詳しい内容は、こちらのブログをご覧ください。

再生医療に関連する法律について

 

年齢による効果の差については、採れる幹細胞の質は変わらないので年齢による効果の差はないと思っていただいて結構です。

 

年齢による効果の差はない.png

Q.どのくらい効果が持続しますか? 二回目投与はいつ必要ですか?また通院頻度はどのくらいですか?

効果の持続期間というのは、どの病気に対して使用するか? によってだいぶ違います。

例えば脳梗塞の方は、幹細胞の点滴をして指が動かしやすくなるなどの神経症状の改善が見られます。

そして、一回改善したものはほぼ永久的に持続するという方が多いように思います。

再生医療で治療する事が多い膝関節に関しても、一回痛みが取れてしっかりとリハビリを行うことで、持続するということが言えると思います。

 

一方で顔に関しては、個人差があります。

例えば、顔面の皮膚に対して投与した場合に、個人差がありますが半年から一年ぐらい効果が持続する方が多いです。

 

質問内容の「二回目はいつ打てば良いですか?」に関しては、一回打てばずっと効果が続くようなものには二回目はないですし、顔の皮膚のように数ヶ月毎に幹細胞治療を受けた方がいいというケースもあります。

詳しいことに関しては、その状態あるいは適応によって変わりますので、担当の医師にご相談下さい。

 

Q.美容施術(ヒアルロン酸注射、糸リフト等)と同時におこなうと相乗効果などはありますか?

これは、同時に行う事で相乗効果が期待できます。

例えば、美容施術のダウンタイムで色素沈着を生じたり、腫れ・内出血を起こしたりするようなものがありますが、この様に炎症を伴うような処置に関しては幹細胞の点滴などを同時に行うと、幹細胞の炎症を抑える作用でダウンタイムを短くする効果があります。

 

美容処置で一時的に顔の皮膚に損傷を与えるのですが、同時に幹細胞の点滴を行うと幹細胞が損傷があるところに集中してくれる作用のおかげで相乗効果を発揮するというメカニズムがあります。

美容は相乗効果.png

Q.幹細胞の投与(治療)にかかる時間はどのくらいですか?

治療の内容によってかかる時間が全然違います。

例えば顔に注射をする場合は、まず顔に麻酔クリームを塗ってから30分間おきます。

その後に10分ぐらいかけて顔に幹細胞を注射していくため、1時間弱ぐらいは時間がかかります。

膝関節への注射ですと、関節内部への注射なので5分〜10分あれば済んでしまいます。

一方で幹細胞の点滴ですと、点滴は急速に入れることができないので、約1時間以上ゆっくりと時間をかけて点滴する必要があります。

 

治療時間.png

Q.幹細胞投与後、気を付けることはありますか?

例えば顔に注射をする場合は、暖まり過ぎたり・長湯をしたり・お酒飲んだりすると注射を打ったところが赤くなったり、稀に内出血をしたりすることがありますので、その様な行為はやめた方がいいです。

やってはいけないこと.png

Q.幹細胞治療のリスク・副作用はありますか?

幹細胞治療に限らず、どの治療であっても医療行為である以上、リスクや副作用があります。

幹細胞のお肌への注射に関しては、注射を打ったところの内出血が稀に見られるぐらいのリスクです。

腫れたり、赤くなったりするダウンタイムは、非常に短い治療になると思います。

 

肌の副作用.pngまた、膝関節などの関節内の注射は、副作用としては痛みがあります。

注射を打った後は一時的に少し腫れたりするので、腫れた様な痛みが出る時があります。

副作用ではないかもしれませんが、注射を打った後の関節に関してはよく動かす必要がありますのでリハビリが必要になってきます。

膝の副作用.png

幹細胞の点滴に関してのリスク・副作用としては、たくさんの細胞を急速に血管内に点滴すると血液が固まってしまうというリスクがあります。

そのため点滴に関しては、1時間以上の時間をかけて少しずつ点滴していきます。

 

以上、患者様からよくいただくご質問と回答でした。

他にも幹細胞治療についてご質問がありましたら、お気軽に当院までご連絡下さい。

 

こちらの内容は動画でもご覧いただけます。

「再生医療等安全性確保法」において、細胞の培養を外部委託ができるようになりましたが、私たちのクリニックでは細胞培養施設を院内につくりました。クリニックでは珍しい例ですが、全てに責任を持ちたいという思いがあるからです。
今回は、おもに細胞培養の手順についてお話しいたします。
 

再生医療に必要なのは設備と培養士

 

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「再生医療等安全性確保法」では、細胞培養や細胞加工を外部の施設に委託できるようになりました。これによって、再生医療に参入する際の壁がひとつ取り除かれたのです。
病院内に細胞培養の施設をつくるためには、次の条件を満たす必要があります。
 
  • 無菌操作が可能な設備
  • 細胞に適した温度、湿度を保てる設備
  • 細胞を育てるのに必要な培地(培養液)や薬剤を補完する設備
  • 細胞を凍結保存する設備
  • 細胞観察をし、記録する設備
  • 各種の細胞検査を行う設備
 
設備が整っているだけでは、培養はできません。細胞は24時間休みなく増え続けますので、常に管理をするために知識と技術をもった専任の培養士も確保しなければなりません。
これらのことから、外部委託を認可した新法がいかに画期的なのかがわかると思います。

培養細胞は患者そのものであると考えよ

当クリニックには、細胞培養施設があります。
患者から採取した細胞は、患者そのもの。細胞の形態も増殖のスピードも一人一人異なります。そのため、培養細胞での治療ができる日まで、自分たちで詳細に観察し、徹底的に管理するべきだと考えたからです。
 
当クリニックでは、ほかの医療機関からの細胞培養依頼も請け負っています。一部のクリニックだけでなく、再生医療に携わる医師やスタッフ全員で再生医療をもっと広げていきたい、進化させていきたいというのが、我々の願いです。ですから、依頼側の医師から相談があれば経験をお話しすることもありますし、同業者の医師たちに施設を見学してもらっています。
 
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培養士が一つ一つを丁寧に観察

当クリニックの細胞培養室は、入り口に近いところに設置し、窓ガラスを通じて培養機器とスタッフが働いている姿を見ることができます。
培養に従事するのは「培養士」ですが、公的な資格ではありません。日本再生医療学会が細胞培養士を養成し、「臨床培養士」という認定資格を発行しています。一人前になるためには、現場で学びながら研鑽を重ねていくことが必要です。
 
「培養細胞は入院患者と同じ」という共通認識をスタッフ全員で持っています。患者の体内から採取したものですから、いわば患者の分身です。看護師が患者の体調をこまめにチェックするように、細胞培養も丁寧に観察して形や増え方に変化はないかをカルテに記入します。
 
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失敗してもウソはつかず真摯に向き合うのが培養士

こまめに観察していても、培養に失敗するケースもゼロではありません。ごくまれに異物が混入してしまうことがあるのです。これを「コンタミネーション(汚染)」と呼びます。培養の途中で細菌や酵母、カビ、ウイルスなどが混入すると、培養液がにごってくるので、日々、観察していればわかることです。
当クリニックでは、管理を徹底しているのでコンタミネーションは起きていませんが、幹細胞が思うように増えてくれないことは、ごくたまにあります。万が一、そのようなことが起きたときは、患者にありのままを伝えて再度、脂肪採取からやり直すようにしています。
 
幹細胞の増殖は特殊な顕微鏡で観察します。分裂を繰り返すと肉眼でも観察できるくらいには増えてきます。増殖のスピードは年齢などによって個人差がありますし、ステロイド薬を使用している人は、うまく増殖してくれないケースもあります。
 

細胞培養の方法は施設ごとにさまざま

では、細胞培養はどういう手順で行うのかを説明いたしましょう。
その方法は一つではなく、施設ごとにスタンダードな方法を決めて標準操作手順書(SOP)を作成しています。
 

脂肪幹細胞の一般的な培養方法

ここでは、脂肪幹細胞を用いた培養のケースでご説明します。
一般的な方法は、患者の体内から脂肪を採取し、酵素を使って幹細胞を分離します。分離した幹細胞をシャーレにまいて培養液を入れて培養します。簡単かつ、分離した細胞をすぐに培養できることがメリットです。もちろんデメリットもあります。多くの脂肪を採取しなくてはいけないこと、酵素処理をする際に幹細胞に少々ダメージが生じることです。
 

クリニックでは「エクスプラントカルチャー」を採用

一方、当クリニックで採用している「エクスプラントカルチャー」という方法は、患者から採取した脂肪を酵素処理しないまま、人体の組織と同じような構造の特殊な不織布を利用して幹細胞を分離するところから培養をはじめます。
初期段階で薬剤処理をしない分、細胞へのダメージが極力抑えられる方法です。また、採取する脂肪の量も少なくてすみます。
一般の方法では50~200ccの脂肪を採取しますが、「エクスプラントカルチャー」なら0.2cc程度で十分です。その差は歴然。この方法なら、痩せている方でも容易に採取でき、傷痕が残ることもほぼありません。
 
患者の体内から採取した少量の脂肪は、不織布の上に載せて、ヒトの平均的な体温と同じ37度に保たれた無菌の培養器で約10日間置いておきます。すると不織布をつたって細胞が伸びてきているのが、顕微鏡で確認できるようになります。脂肪のかたまりのように見えますが、これが不織布の上に伸びてきた幹細胞です。幹細胞のかたまりを確認した時点で脂肪細胞と脂肪幹細胞を分離するために薬品を使用します。幹細胞を分離したら専用のフラスコの中に入れて培養液に浸し、常に37度に設定した培養器に入れます。
 

時間はかかるが、患者の負担が少ないのがメリット

培養する幹細胞の数は、行う治療によって異なります。たとえば、変形性膝関節症のケースでは、片方の膝に用いる場合、5000万~1億個の幹細胞が必要です。0.2ccほどの脂肪細胞を不織布にのせ、その数までに達するのに最短で3週間ほどかかります。
一般的な方法を採用すれば、10日ほど早く治療ができることになるので、エクスプラントカルチャーのデメリットは時間がかかることと言えるでしょう。ただ、細胞が受けるダメージと患者への侵襲を考えるとメリットのほうが上回ると考え、この方法を選択しています。
 

治療日程によって凍結保存することもある

治療スケジュールは、細胞の育ち具合によって判断します。細胞の数が目的の値に達するまでどれくらいの日数がかかるか目安がわかっていますので、おおよその予定は立てられます。患者さんの都合で治療日を遅らせる場合は、一旦細胞を凍結し、治療のタイミングでベストな状態で投与できるよう調整します。
 

ダメージを減らすためゆっくりと凍らせる

凍結方法は、マイナス80度よりもさらに低温となる液体窒素を使って、マイナス196度で保存します。細胞にとって凍結・解凍はとてもストレスになるので、極力少なくするため、「緩慢(かんまん)凍結」とう方法を用いています。
細胞内に氷ができてしまうと、幹細胞が壊れてしまいますので、少しずつ温度を下げていくのです。
解凍は治療日よりも前に行います。冷凍・解凍の過程で生じる細胞ダメージは、要因が複合的ですべてを把握しきれていません。さまざまな観点から改善点を探り、今後の課題としています。
 
さまざまな課題をクリアするために、共同研究をはじめました。そのことについては、次回に。
前回は、2014年に施行された再生医療に関する法律のひとつ「再生医療等安全性確保法」について解説しました。今回は同時に施行された「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」(改正薬事法)と、再生医療等安全性確保法において、審査を行う機関について説明します。
 

提供計画書を審査するのが「認定再生医療等委員会」

 

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国が定めた「再生医療等安全性確保法」により、治療の妥当性、安全性、医師体制、細胞加工管理体制が認められれば、再生医療による治療が可能になりました。
厚生労働省への届け出が必要なのですが、その前に医師や法律家が集まった委員会の承認も必要なのです。

医療や法律などの有識者で構成

認定再生医療等委員会のメンバー構成において、要件、基準が設けられています。構成要件はつぎの8つです。
 
1.分子生物学、細胞生物学、遺伝学、臨床薬理学、または病理学の専門家
2.再生医療等について十分な科学的知見及び医療上の識見を有する者
3.臨床医(現に診療に従事している医師または歯科医師。以下同じ)
4.細胞培養加工に関する識見を有する者
5.医学または医療分野における人権の尊重に関して理解のある、法律に関する専門家
6.生命倫理に関する識見を有する者
7.生物統計その他の臨床研究に関する識見を有する者
8.第一号から前号以外の一般の者
 
ほかに基準として、男性および女性がそれぞれ2名以上含まれること、再生医療等委員会を設置する者と利害関係がない者が2名以上含まれることがあります。
 
認定再生医療等委員会は日本全国に50団体ほどありますが、現状は東京などの都市部に集中しています。特に高度な審査能力や第三者性を有する委員会は「特定」認定再生医療等委員会と呼ばれ、第一種と第二種の審査に携わります。
 

(特定)認定再生医療等委員会の業務

(特定)認定再生医療等委員会は、医療機関から提出された計画が厚生労働省の定めた基準に合致しているかなどを審査し、意見を述べます。
審査に合格し、再生医療の治療が始まったあとも定期的に報告を受け、再生医療等に起因する病気や障害などが起きたときは原因を究明し、場合によっては再生医療の提供を中止するよう申し渡すこともあります。
 
私もとある特定認定委員会のメンバーに入りました。2番目の「再生医療等について十分な科学的知見及び医療上の識見を有する者」という立場で参加しています。
主な仕事を挙げると、医療機関が提出した論文や動物実験データなどを精査したうえで、質疑応答を行います。同じ治療法を提出したAとBの医療機関があったとして、Aは承認されたけれど、Bは審査が通らないケースがあり得ます。医療内容だけをチェックしているだけではなく、医療従事者の知識、見解、倫理観も含めて検討していく必要があります。ですから、(特定)認定再生医療等委員会には幅広い分野の専門家が必要なのです。

 

薬機法により、開発から臨床までの期間が短くなった

「再生医療等安全性確保法」と同時に施行されたのが、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」です。この法律によって、再生医療に関連する医療機器や医薬品は、ほかの分野に比べて開発から臨床までの期間を短くすることができるようになりました。

一般的な医薬品の承認プロセス

一般的な医療機器や医薬品は承認されて患者様に届くまで、約10年かかるのが普通です。厚生労働省の承認を得るまでには、次の段階を経なければなりません。
 
1.基礎研究
2、非臨床試験
3.臨床試験
  …第Ⅰ相試験
   第Ⅱ相試験
   第Ⅲ相試験
4.承認審査
5.価格の設定、販売
 
細かい説明は省きますが、何段階もの臨床試験や審査を通ってようやく私たちのもとに新約や、新しい治療法が届くのです。
 

早く治療を提供するために臨床試験期間を短縮

再生医療では、臨床試験を経て承認されるプロセスが免除されました。もちろん、治療の報告と検討の義務はありますが、これは画期的なことです。つまり、厚生労働省が再生医療の可能性を認めているといえるのではないでしょうか。
 
ヒトの細胞を治療に用いるため、細胞を採取する人の個人差によって品質が均一ではなく、臨床試験データの収集や評価に長い時間がかかっていました。しかし、患者様に早く治療を提供するために臨床試験期間を短縮し、有効性、安全性が確認できた時点で製品化できることになりました。
現状では、世界のなかで日本はもっとも短期間で再生医療製品が承認される国なのです。

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