2022年4月アーカイブ

先日、大阪で行われた第65回日本形成外科学会総会・学術集会に参加してきました。1年に1度の、形成外科領域の日本最大の学会になります。

 

学会全体のテーマも”形成外科とテクノロジーの融合”で、医療におけるデジタル化を意識した内容となっていました。AIやVR/ARなど流行りのテクノロジーや、最新医療機器に関するディスカッションが充実している学会でした。2022年度の診療報酬改定(医療行為に対して支払われる報酬=診療報酬が2年に1度改定されます。国の医療の方向性を決める舵取りの意味合いもあります。)において、オンライン初診が認められるなど、今後日本の医療体制は大きく変化していくと思われます。これに伴い、美容医療やリンパ浮腫治療も形を換えていくのかもしれません。

 

私は、”形成外科領域における超音波機器の応用”というテーマのシンポジウムにて、超高周波超音波の応用例について発表してきました。超音波は、体への侵襲なく(CTやレントゲンは被爆の問題があります。)、リアルタイムに体の状態が分かる優れた医療機器になります。リンパ浮腫治療においても、診断や手術前の治療計画のために超音波機器を用いることは重要になってきております。

 

当院においても、リンパ浮腫や下肢静脈瘤の診断、外科治療の術前検査において、高解像度の超音波機器を使用しています。

今後も最新の知見を常にアップデートしつつ、リンパ浮腫治療を行なっていこうと思います。

 

(辛川領)

やけど。

聞くだけで、痛そうなどイメージが湧いてきます。

程度はあると思いますが、一度は経験されたことあるのではないかと思います。ありふれた怪我の一つです。

 

小さく浅いやけどでしたら塗り薬だけ、ということもあります。しかし広くて深い場合には命に関わることもしばしばあります。そんなやけどにまつわる脂肪由来幹細胞について、今回はその紹介をしたいと思います。

 

皮膚はバリアです。体の中と外を分ける、壁のような働きをしています。その壁である皮膚には、外張りである表皮、内張りとして弾力を持つ真皮があります。内部には血管などのパイプラインやエネルギー庫である脂肪、もっと深くなると筋肉、骨がそれぞれの持ち場で役割をもって働いています。

 

さて、やけどというのは、外敵が攻めてくることで強固なはずの壁を破壊されてしまい、傷ができてしまった状態です。体は傷ができたその瞬間から、その部分を治そうと、せっせと働き始めます。

 

まず幹細胞は炎症反応を抑え、細胞増殖や血管新生を促進することで、傷を治す効果が期待されています。その他にも、シグナル経路への良い影響が指摘されています。

 

シグナル経路は簡単にいうと細胞同士の報連相のようなもの。社会と同じように問題を解決するべく、局所の細胞たちは連携をとるわけですが、幹細胞のように「生きた」薬は傷に起こる細胞間の連携にも影響を与えます。

 

皮膚の傷を治す経路はざっくり5種類くらいあって、簡単にはWnt、TGF-β、PI3K/AKT、Notch、Shhなどと呼ばれます。

 

それぞれ報連相の先に何を治すのが得意という棲み分けがあって、Wntは表皮などの壁構造、TGF-βは真皮と表皮-真皮の連携、PI3K経路は血管などのパイプライン、Notchは幹細胞の維持などの後方支援、Shhは血管新生に毛包などの付属器の形成に重要な役割を持ちます。それぞれの経路を促進することで傷の治りに働くと言われています。

 

そのほか、手術で切除した組織の中から幹細胞を取り出して利用する、というものもあります。深いやけどの場合、ダメになった皮膚(壊死組織)を残しておくことでバイキンがついたり、傷の治りにはよくないことが起こります。そのため治療の一環として手術で壊死組織を取り除くことがありますが、その中から幹細胞を取り出して再利用するというものです。発想が面白いなあと思いました。

 

深いやけどは、突然攻めてきた巨人に街をぐちゃぐちゃにされた進撃の巨人のオープニングさながら、大惨事となります。壁を直しつつ、壁の中の荒れた部分を治す、やけどの治療はウォールマリア奪還作戦のようです。

 

進撃の巨人XRライドが、ユニバーサルスタジオで人気を博しているようですね。夏までの限定とのこと、いつか乗ってみたいと思います。

 

ではまた!

 

加藤基

 

参考資料

Abdul Kareem N, Aijaz A, Jeschke MG. Stem Cell Therapy for Burns: Story so Far. Biologics. 2021;15:379-397. Published 2021 Aug 31. doi:10.2147/BTT.S259124

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