2022年9月アーカイブ

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サウナはリンパ浮腫のリスクになるか?

”みんなのリンパ浮腫”アカウントに様々なご質問をいただきます。
リンパ浮腫の臨床的な発生リスク(手術方法や放射線療法など)に関する研究はたくさんありますが、日常生活とリンパ浮腫発生に関連した質の高い研究は、それほど多くなく分からないことも多いです。
 

本ブログの要約

リンパ浮腫のリスクとサウナ利用の関係について解説されています。​乳がん手術後のリンパ節切除患者295人を対象としたペンシルベニア大学の研究によれば、30の生活行動の中でサウナ利用のみが腕の腫脹と有意に関連していました。​ただし、サウナ利用者は全体の4%と少数であり、切り傷の有無との関連も指摘されているため、現時点ではサウナ利用は避けた方が無難とされています。
 

「リンパ腫れがある中でサウナに入ってもいいか?」

本日は、いただいた質問の中で“リンパ浮腫リスクのある人はサウナに入っていいのか?”というものがありましたので、科学的根拠とともにお答えしようと思います。サウナは、むくみの改善・解消、水分代謝によるデトックスや美容効果があると、一般的に知られているので、ご質問が多いのかもしれません。
 
 
結論としては、「サウナは避けた方がよい」でしょう。
 
 
 
今回ご紹介する研究1は、アメリカのペンシルベニア大学で行われた、295人の乳がん生存者(少なくとも1つのリンパ節を切除した者)を対象に、腕のむくみと関連する可能性のある30の生活行動への暴露を調査した研究になります。前向きサブグループ解析で比較的エビデンスレベルの高い研究です。
 
全30の生活行動の中で腕の腫脹(健側と患側の体積差の5%以上の増加として定義)の発生と有意に関連した唯一の危険因子が”サウナ利用”でした。その他、日焼け、火傷、浴槽使用、血圧測定などは有意な危険因子ではありませんでした。
 
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(文献1より抜粋)
 
 

サウナとリンパ浮腫の関係は今後も研究が必要

ただし、この研究でサウナの利用を報告した参加者の数は少なく(295人中13人[4%])、著者らはサウナ利用と患側の腕に切り傷があることとの間に有意な関連も報告しており、サウナの高温環境への曝露(ばくろ)それ自体が腕の腫脹(しゅちょう)の原因ではない可能性もあります。
 
サウナの極端な温度がリンパ浮腫の危険因子であるかどうかを確認するためには、さらなる研究が必要と著者らも述べており、現時点では「サウナは辞めておいた方が無難」というのが個人的な見解です。この結論は今後覆されるかもしれませんね。
 
 

FAQ

Q1:リンパ浮腫のリスクがある場合、サウナを利用してもよいですか?

A1:現時点では、リンパ浮腫のリスクがある方はサウナの利用を避けた方が無難とされています。サウナ利用が腕の腫脹と有意に関連しているという研究結果があるためです。
 

Q2:サウナ以外にリンパ浮腫のリスクを高める生活行動はありますか?

A2:同じ研究では、日焼け、火傷、浴槽使用、血圧測定などは有意な危険因子とはされていませんでした。
 

Q3:サウナがリンパ浮腫のリスクとなる理由は何ですか?

A3:サウナの高温環境がリンパ浮腫のリスクとなる可能性がありますが、詳細なメカニズムはまだ明らかではありません。今後の研究が必要とされています。
 
 
 
(辛川領)
 
 
 
参考文献
 
1. Showalter SL, Brown JC, Cheville AL, Fisher CS, Sataloff D, Schmitz KH. Lifestyle risk factors associated with arm swelling among women with breast cancer. Ann Surg Oncol. 2013 Mar;20(3):842-9. 
 
<記事更新:2025年5月5日>

「力足らざるものは中道にて廃す。今汝は画れり(いまなんじはかぎれり)」 論語 雍也

 

新たな地平線を開拓することこそ研究の醍醐味ですが、研究といえども「この分野はもー無理ちゃいますのん?」と思われていることもあります。現状の科学では技術的な限界で到達できないのか。いやいや、なかにはそれらを打ち抜いて目標を達成し、後から考えて自分たちが限界を作ってしまっていたんだとわかることもあります。

 

再生医療のなかでも細胞と足場素材を組み合わせた治療は今後期待される分野だ、と以前のコラム「再生医療の歴史」で申しました。負傷した臓器を『再生』させる取り組みとして、これまでも細胞をゲルに混ぜて投与する実験がなされてきたのですが、体内ではなかなかうまくいかず、限界があるとされてきました。

 

液体状の素材では体から追い出されるように出て行ってしまい定着しない。だから固形に近い素材に細胞を振りかけて“手術”で植えてくるのが限界。

また、細胞を使った3Dプリントという技術はあるけれども、これもシャーレの中の話で、体のなか(In-situ、インサイチュと呼びます)ではなかなかうまくいかない。

これらの限界突破を目指し、簡便に体に直接振りかけるようにして体内や体表で3Dプリント生着できないものか、と取り組み成功したという報告です。バイオプリント用のバイオインクの作成に成功した、と報告されています。

 

ロジックとしては微小ゲルと体にくっつき固形になりやすい2種類の液体を混ぜ合わせることで、細胞の生着と素材自体の固着に有利な条件を見出した、というものです。理屈はわかりますが、どうやってこの素材に辿り着いたのか、私にはよくわかりません。

 

実際にラットの頭蓋骨に穴を開けて、その場所に投与した場合、細胞を入れたバイオプリント群では何もしなかったものや細胞を入れなかったものに比べて骨形成がよく、その一因として投与した細胞はインクのなかで1週間以上生きていることがわかっています。

 

論文の中ではリュックサックの写真まで出ていて、この中にキット全て入ります。だから病院でなくてもすぐに治療ができます!とされていますが、、これはまだ先の話かも。でも夢があります。

 

アウトドアに絆創膏の代わりにキットを一つ持っていけば傷もとっても早く治る、なんて時代が近づいているのかもしれません。

 

「力が本当にない人は途中でやめてしまっている。限界を自分で決めてはいけませんよ。」限界を感じ弱音を吐いた弟子に対して、孔子が送った励ましの言葉が、時を超えて聞こえてくるようです。

 

ではまた!

 

(加藤基)

 

参考資料

Xie, M., Shi, Y., Zhang, C. et al. In situ 3D bioprinting with bioconcrete bioink. Nat Commun 13, 3597 (2022). https://doi.org/10.1038/s41467-022-30997-y

 

 

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