2020年4月アーカイブ

木曜日のリンパ浮腫外来を担当している吉松英彦医師の論文が発行されました。オープンアクセスなので、だれでも読むことができます。

 
 
 
動画はこちら 
 
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リンパ浮腫の治療の一つにリンパ節移植という手術があります。この論文では、もう一歩進んだリンパ組織移植の治療結果について発表しています。リンパ節移植またはリンパ組織移植は、リンパ浮腫が進行して機能が残っているリンパ管がなくなっても浮腫が改善する可能性のある治療法です。全身麻酔での治療になりますので、リンパ管の機能が残っているうちは、日帰りでも出来るリンパ管静脈吻合術(LVA)をお勧めします。
 
当院では日帰りで行うリンパ管静脈吻合術(LVA)に力を入れています。詳細については手術のページをご覧下さい。
 

 

以前の投稿で何度か、すでに中国では間葉系幹細胞をコロナウィルス肺炎とくにARDSに用いる臨床試験が始まっているとお伝えしました。

2020/04/02 幹細胞点滴でコロナウィルス感染症治療(第Ⅱ相試験)
2020/04/03 幹細胞点滴、COVID-19肺炎に有効性
2020/04/16 コロナARDS治療、幹細胞に注目

 

北米や、われらが日本ではどうかというと、こちらにもその動きがあります。

まず、アメリカ・フロリダのマイアミ大学ですが、Camillo Ricordi医師のグループが臍帯由来間葉系幹細胞(UC-MSCs:umbilical cord mesenchymal stem cells)をコロナARDSに対して用いる臨床試験を始めます。24人に対して行われます。臍帯由来ですから他人の細胞ということになります。

 

臨床試験の情報はこちら↓

https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04355728?term=MSC&cond=Coronavirus&cntry=US&draw=2&rank=1

CMS miamiのサイトに関連する報道がありました↓

https://www.msn.com/en-us/health/medical/coronavirus-q-a-dr-camillo-ricordi-gives-update-on-trials-of-stem-cell-treatment-for-most-severe-covid-19-cases/ar-BB130AMs

 

また、日本のCENEGENICS JAPAN という企業がスポンサーとなって、メキシコの医療機関において同様の臨床試験が計画されているようです。今回はメキシコで、今すぐに日本でもというわけではなさそうですが、日本の企業が行う試験ですから最終的には日本でも展開するのが自然な流れですね。メキシコの試験では50例目標だそうです。今のところ詳しい臨床試験の情報は得られませんでしたが、免疫療法のテラ株式会社からのリリースがありましたのでリンクを載せておきます↓

https://contents.xj-storage.jp/xcontents/21910/8d801aba/011a/439f/a7e4/a1d2575de947/140120200427400832.pdf

 

いずれにしても、中国以外でも間葉系幹細胞を用いた治療が広がりそうです。

幕末の頃、イギリスを中心に細菌学や衛生に関する医学が発展していたという話を進めてまいりました。今回はそんな幕末〜明治維新に日本で活躍したイギリス人医師、ウィリアム・ウィリスを紹介したいと思います。

 

彼は20年近く日本に滞在し、日本人女性と結婚。幕末の大きな流れに翻弄されながらも、軍陣病院(東京大学病院の前身)、鹿児島医学校兼病院(鹿児島大学病院の前身)を開き、西洋医学を日本に広めた人としても有名です。

 

25歳で日本に渡ってきたのち、医官および外交官として働き始めます。来日して1年経たない頃に生麦事件が起こります。これは騎乗したまま大名行列に乗り入れたイギリス人商人、リチャードソンを薩摩藩士が無礼打ちし、のちに薩英戦争にまで発展した事件として知られています。ウィリスは亡くなったリチャードソンを検死したそうです。この事件、考え方は色々とありますが、今で言うと天皇一行の行列に、一般車両のまま横切ったため、「切捨御免」にされたと言うもの。「切捨御免」は当時の武士に与えられた特権だったと言うことですが、切捨後には役所に届け出る、自宅謹慎期間、証拠品を検分のために一時押収される、正当性を立証する証人が必要、などの条件も定められていたとのこと。ただ国際的に、殺人が合法化されるわけでもなく、イギリスとの衝突は避けられない状態でした。結果、先ほど少し触れました薩英戦争に発展しますが、これ、薩摩藩vsイギリスで普通に考えたらありえない規模の戦いです。今で言うなら、鹿児島県vsアメリカといったところでしょうか。もちろん薩摩藩は勝てるわけないのですが、最新兵器のアームストロング砲(射程距離が日本のものより格段に優れていた)などを目の当たりにして、一転。その後の外交も効いて、イギリスと薩摩はお互いに友好関係を深めます。

 

さて、ウィリス、彼も順風満帆、と言うわけではなかったようです。外科医の心得もあった彼は戦争・内乱での負傷兵の治療に力を注ぎます。しかし当時は攘夷思想(外国人あっちいけと言う考え方)が満ちており、外国人が国内にはいづらい雰囲気だったことが予想されます。さらに長崎を中心に蘭学から医学(蘭方医学)、蘭学医が学んだオランダ語の医学教科書がドイツ人医師によって書かれていたことなどが関わって、ドイツ医学を進めようと言う気風が出てきます。そして明治になってから、ドイツ人医学教師が来日するようになり、日本医学の中心はドイツ医学へと変わっていきます。そしてウィリスは鹿児島へと拠点を動かします。

 

鹿児島でも外国人冷遇の風は冷たく、ウィリスも当初は不満を漏らしていたようです。ところが奥さんを娶り、徐々に教育や医学での貢献が評価され、門下生からは高木兼寛(ビタミンの父、東京慈恵医科大学の創設者)などを輩出していきます。のちにバンコクでも医療の基礎を築きました。

ベッドサイドの教育(患者さんの病床で診療する姿や考え方を先生自らが示すことで、若手医師を教育する方法)に力を入れていた彼は「これほど人情味のある医師はいない」と評されることもあるほど。190cm、127kgの巨漢と言うこともあって、存在感があったことと想像できます。ぜひ会ってみたかった、と思える偉人の一人です。

 

あのままイギリス医学が日本の中心であり続けたら、今頃英語の論文を読むのに困らなかったのかな、などと一介の医師として考えたりしておりますが、歴史にタラ・レバはありません。大学時代に身に付けたドイツ語の名残?「エッセン」に向かおうと思います。何のことって?

 

食事です。

 

ではまた!

(加藤基)

 

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ウィリアム・ウィリス wikipediaより

 

参考文献

明治維新の際、日本の医療体制に何がおこったか 日東医誌 Kampo Med 57(6) 757-767, 2006

『ある英人医師の幕末維新―W・ウィリスの生涯』 ヒュー・コータッツィ著 中央公論社

 

ウィリアム・ウィリス wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%AA%E3%82%B9

 

切捨御免 wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%88%87%E6%8D%A8%E5%BE%A1%E5%85%8D

 

薩英戦争 wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%96%A9%E8%8B%B1%E6%88%A6%E4%BA%89#%E6%88%A6%E4%BA%89%E3%81%AE%E5%87%A6%E7%90%86

MAPC(Multipotent Adult Progenitor cells)は骨髄由来の細胞で、骨髄由来間葉系幹細胞(MSC:mesenchymal stromal cells)と異なるとされている細胞です。

https://www.nature.com/articles/nature00870

https://www.bbmt.org/article/S1083-8791(05)01130-4/fulltext

 

MAPCとMSCはとても似通った性質があり、ともに幹細胞の定義を満たし、多能性(いろいろな細胞に分化する能力)があり、自己複製能が高く、免疫システムを刺激しません。しかし、培養に際して用いる増殖因子や細胞の表面抗原が異なるとされており、詳細については下記の論文に分かりやすくまとめてあります↓

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fimmu.2019.01952/full

 

MSCは1960年代から研究され、数多くの基礎研究と臨床研究が実施されています。一方、MAPCは2001年に初めて報告されていますのでMSCほど多くのデータはありません。両者の性質が非常に似通っていることと、実際上は培養方法もかなり近く、表面抗原を調べてまで両者を区別することはしないため、昨今行われてい幹細胞研究および臨床研究の中で、MAPCの一部もしくはかなりの部分はMSCとして扱われている可能性があります。

 

このMAPCが新型コロナウィルス感染によるARDSに有効であるか臨床試験が行われています。

https://www.athersys.com/clinical-trials/ards/default.aspx

MAPCについてはアメリカの企業がライセンスを保有していますが、日本でも4月から治験がはじまります。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57987760T10C20A4TJ1000/

リンパの腫れとコロナの皮膚症状

2020年4月11日のブログに、リンパ浮腫の蜂窩織炎(ほうかしきえん)に伴う発熱とインフルエンザ症状が似ていることを投稿しました。今回はリンパ浮腫で蜂窩織炎をおこしたときの皮膚症状と、新型コロナウィルス感染症の皮膚症状についての情報です。

 

足むくみと赤い斑点

まず、リンパ浮腫の蜂窩織炎の皮膚症状は、症状が出ている手足「患肢(かんし)」に限局していて、初期にはぴりぴりした感覚があり、ぽつぽつと毛穴のように小さい赤い斑点が生じたり、もう少し大きめの赤い斑点が多発したり、面として全体的に赤く腫れてきたりもします。また、赤いぽつぽつが、白ニキビの様に膿を持つこともあります。指で押すと硬く、痛みがあり、反対側の四肢と比べて温度が高いので熱を持っていることがわかります。抗生物質で治療することにより、数日で改善してきます。

 

リンパ浮腫の蜂窩織炎(ぷつぷつ)

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リンパ浮腫の蜂窩織炎(まだら状)

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リンパ浮腫の蜂窩織炎(面状)

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リンパ浮腫の蜂窩織炎(毛嚢炎)

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コロナとリンパの腫れに関する報道や論文

一方で、新型コロナウィルス感染症の初期症状として皮膚症状が認められるかもしれない、ということが、ここ最近になってアメリカやフランスで報道され、イタリアからは論文も投稿されています。専門家(皮膚科医)の証言として集まってきているようです。

<参考文献>

https://nypost.com/2020/04/10/coronavirus-patients-report-strange-new-symptom-fizzing/

https://www.lefigaro.fr/flash-eco/coronavirus-les-dermatologues-alertent-sur-des-signes-cutanes-20200408

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/jdv.16387

 

電気が走るような、凍傷のような、ときに痛みを伴う発赤、蕁麻疹のような、、という風に表現されています。実際の写真がありませんでしたので何とも言えませんが、文字だけで判断すると何だかリンパ浮腫の蜂窩織炎の異常知覚や皮疹に似ていなくともないです。

写真が掲載されているサイトを見つけましたので、転載しておきます。(2020.4.20追記)

 

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参照サイト:DermNet NZ, Covid-19 and Dermatology Patients.

(ニュージーランドの皮膚科医が提供する患者向け皮膚科情報サイト)

また、リンパ浮腫の患者さんに多いとは限りませんが、足のゆびや足底に水疱瘡あるいは麻疹のような皮疹が出現するという情報もありましたので、これも転載しておきます。ただし、スペインはコロナウィルス感染患者数が多いので、偶然、皮疹を伴う他の疾患と合併した可能性もあります。したがって、現時点ではウィルスと皮疹の因果関係が明らかではありません。

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参照サイト:Consejo General de Colegios Oficiales de Podólogos de España (スペインの足病医協会サイト)

 

リンパ浮腫の患者さんで皮膚症状が出現したとき、まずは蜂窩織炎の可能性を考えて患肢の冷却と安静をはかったうえで、医療機関に相談して治療をしなくてはなりません。しかし、それ以外に咳や息苦しさ、発熱、味覚・嗅覚異常、3密だった、流行地へ往来したなどで、新型コロナウィルスに感染したかもしれないと思った場合は、医療機関を受診する前に電話などで相談した方が良いでしょう。

 

リンパ浮腫に伴う蜂窩織炎には、リンパ管静脈吻合術(LVA)が有効です。当院では日帰りで行うリンパ管静脈吻合術に特に力をいれています。詳細については手術のページをご覧ください。

<記事更新:2023年11月20日>

リンパ浮腫と発熱

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新型コロナウイルスが流行しているため、熱がでると心配ですね。
 
 

リンパ浮腫 合併症「蜂窩織炎」

リンパ浮腫の合併症のひとつに「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」という熱を伴う症状があります。蜂窩織炎になった方はわかると思いますが、最初はまるでインフルエンザのような症状となります。38度から、ときには40度以上の高熱がぱっとでて、寒気(悪寒)や関節痛、筋肉痛を伴います。そして、同じくらいのタイミングでリンパ浮腫のある手足に赤味や痛み、腫れが生じます。
 

蜂窩織炎の症状とは

これは、リンパ浮腫のあるほうの手足の皮膚・皮下脂肪に細菌が侵入し、それらが産生する毒素が血流にのって体中にまわり、それに対して体が免疫反応を起こして発熱や炎症を引き起こしている状態なのです。
蜂窩織炎は、インフルエンザと症状が似ていても、細菌感染を原因とした症状であって、ウィルスの全身感染によっておこるインフルエンザとは違うものです。
また、リンパ浮腫の患者さんにインフルエンザのような症状があっても、同時に手足にも症状がでて、熱もパッと消えますから、恐らくは蜂窩織炎であってインフルエンザではないということが分かります。
 
 
 
恐らく、、、?
 
 

蜂窩織炎とインフルエンザ合併の可能性も

恐らくといったのは、実は、単純な蜂窩織炎と思っていても、インフルエンザを合併していることがあるのです。リンパ浮腫の患者さんがのどの粘膜などからインフルエンザにかかると、当然、発熱、関節痛、筋肉痛が発生しますが、それと同時にリンパ浮腫のほうの手足が赤く腫れてくることがあります。(また、インフルエンザ以外の細菌性の上気道炎、扁桃炎が明確にあって、さらに発熱と同時にリンパ浮腫のほうの手足が赤く腫れてくるのを見かけることがあります。)
 
 

リンパ浮腫に起因する蜂窩織炎の発症原因とは

韓国のKosin UniversityのPark医師らの調査によれば、1246人のリンパ浮腫患者のうち99人(7.95%)に蜂窩織炎の発症があり、ひとりで複数回発症があるので、これら99人の患者さんに合計188回の蜂窩織炎を認めたそうです。そのうち24回(12.77%)の原因はcommon cold(つまり風邪)またはwound(キズ)だったとのことです。
 
 
 
風邪から蜂窩織炎を発症する理由ははっきりとはわかりませんが、
 
 
 
1)リンパ浮腫の手足は病原体に対して免疫が弱くなっているため、ウィルスなどが流れ着いて手足で特に強い炎症をおこす
 
2)リンパ浮腫の手足はもともと炎症状態にあり、全身感染により強く免疫反応がひきおこされる
 
3)たまたま、風邪(鼻腔口腔咽頭粘膜のウィルス感染)と蜂窩織炎(皮膚の感染)に同時にかかった
 
などのメカニズムが考えられます。
 
 

リンパ浮腫に関連する「発熱」と「蜂窩織炎」の可能性

つまり、同じ「発熱+蜂窩織炎」でも、
 
 
A.
リンパ浮腫の手足に細菌感染
蜂窩織炎
細菌の毒素が全身にまわる
全身の発熱 
 
 
 
B.
インフルエンザウィルスなどの上気道感染
全身の発熱
リンパ浮腫の手足にも波及(?)
蜂窩織炎
 
 
ということが可能性としてありえますので、よくわからないときはこちらからご相談ください。
 
 
また、リンパ浮腫の患者さんが新型コロナウィルスにり患した場合の発熱については、蜂窩織炎を伴うことがあるのかどうかまだわかりませんので、情報を集めてゆきたいと思っています。
リンパ浮腫に伴う蜂窩織炎には、リンパ管静脈吻合術(LVA)が有効です。当院では日帰りで行うリンパ管静脈吻合術に特に力をいれています。詳細については手術のページをご覧ください。
<記事更新:2023年10月31日>

コロナARDS治療、幹細胞に注目

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急性呼吸窮迫症候群(ARDS=Acute Respiratory Distress Syndrome)は、感染などを契機に肺の内部に炎症が起き、浸出液で肺の中が水浸しになり、肺がつぶれてまともに呼吸ができなくなる状態です。肺には肺胞という小さい袋がたくさんあり、毛細血管とリンパ管が取り囲んでいます。この毛細血管から沁み出た間質液は、健康な時はリンパ管により回収されますが、ARDSでは沁み出す液の量が増加する上にリンパ管からの回収が滞るので、肺胞内に浸出液がどんどん溜まってしまいます。浸出液が溜まった肺胞は吸った息が入りにくくなるため、つぶれやすくなります。肺胞がつぶれるとガス交換ができず、全身に酸素が供給できなくなります。治療として肺がつぶれるのを防ぐために陽圧をかけた人工呼吸器の装着が必要で、肺炎のなかで最も重症で危険な状態ともいえます。

 

ARDSに関してひとつ論文をご紹介します

 

アメリカ胸部疾患学会の機関紙であるATS journalsのひとつ"American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine"に掲載された、

Fifty Years of Research in ARDS. Cell-based Therapy for Acute Respiratory Distress Syndrome. Biology and Potential Therapeutic Value.

という論文です。間葉系幹細胞(MSC)をARDS患者に点滴投与すると、呼吸状態が改善するということが動物実験からも臨床試験からも確認されつつありますよ、という総説論文ですね。間葉系幹細胞(MSC)はARDSの炎症を抑制し、傷害された肺を修復するというメカニズムが動物実験などによって確認されています。また、この論文では7つの臨床研究の結果が紹介されています。間葉系幹細胞は骨髄由来と臍帯由来で安全性は確かめられたということ。有効性については人数を増やして検証してゆく必要がありますが、、。基本的には他人の幹細胞ということになります。

 

下のグラフはMetricsという科学論文の閲覧数を分析するツールですが、この文献、発表から3年たってますが3月から急激にダウンロード数を伸ばしていますね ↓

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武漢の医療機関によれば、ICU入室を要したCOVID-19感染者のなかで、初期の報告(1月末)では29%、のちの報告(2月末)では67%にARDSの発症を認めたとのことです。

 

武漢報告Lancet 1月 https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)30183-5/fulltext

武漢報告Lnacet 2月 https://www.thelancet.com/journals/lanres/article/PIIS2213-2600(20)30079-5/fulltext

 

幹細胞をコロナ肺炎ARDSに使おうという動きは、とくに中国では早いようです。一昨日の中国中央電視台(CCTV)のLIVE放送で、コロナ肺炎患者200人に対して幹細胞を投与し、良好な結果を得たというニュースが流れたようです。

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以前のブログでもご紹介した通り、臨床試験として行っているようなので、今後正式な結果が公表されると思います。

 

 

細菌と衛生に関して実践的な医療が発展した19世紀について、これまで数回にわたって書いてきました。今日はそんな時代に忘れることのできないイギリスの偉人を2名ご紹介します。

本記事の要約

19世紀の医療に革命をもたらしたナイチンゲールとリスターの功績を紹介。ナイチンゲールは看護教育と衛生統計に貢献し、リスターはフェノールを用いた手術時の消毒法を開発。ともに現代医療の礎を築きました。日本では同時期に蘭学が広まり、医学の転換期を迎えていました。

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近代看護の礎を築いた、統計と衛生の革命家ナイチンゲール

1人目は、みなさんご存知のナイチンゲールです。白衣の天使、元祖看護師というイメージの方は多いと思いますが、彼女はなんと2年間しか実際の看護実地業務をしていなかった(負傷兵の看護)、というと驚くかもしれません。では、どうして彼女は何をしたのか。。それは主に2つ、看護教育と衛生の統計と言われています。

看護だけじゃない、ナイチンゲールの本当の功績とは

彼女が34歳の頃、1854年から2年間にわたってクリミア戦争(フランス・イギリス他連合軍vs ロシア)に従軍しています。その時、兵舎があまりに不衛生なことに気づき、便所掃除をきっかけに信頼を得て、看護師の総責任者になりました。負傷兵たちの死亡原因を予防可能な疾病、負傷、その他に分けて「見える化」しました。(「鶏のとさか」と呼ばれる円グラフ、下図を参照)また非常にハードワーカーだったようで、夜回りを欠かさなかったようです。イメージですが、キレッキレの若い師長さんって感じですね。印象通り、立場に関係なく、正しいと思うことは誰であってもまっすぐ意見したようです。

終戦後、聖トーマス病院(以前、ジョンソン英首相が入院していましたね)にナイチンゲール看護学校が設立され、運営にも関わっていたようです。現在もナイチンゲール博物館が同病院にあるとのこと。一度訪ねてみたいと思っています。

外科に革命をもたらした“消毒薬の父”ジョゼフ・リスター

さて、衛生の重要性が指摘されたこの時代、もう1つ大きな発展がありました。これまたイギリス人ですが、彼の名はジョゼフ・リスターです。われわれ外科医にとって非常に重要なことを実践した人で、手術時の消毒法を開発しました。当時はフェノールを用いて殺菌していたとのこと。現在、このフェノールは形成外科領域で馴染みの深い薬剤ですが、巻き爪の治療に用います。ちょっと強い薬で、皮膚に傷がつく(細胞障害性)ことを応用して治療に使っています。

吸収糸の発明など、後世に残した医療技術

さて、このリスター、当時は非常に治療が困難であった、開放骨折後の創部感染に対して10名中8名で化膿せずに治療を成功させ、有名な雑誌Lancetに報告しています。のちに動物の腸から、吸収糸を開発したと言われています。

幕末日本と西洋医学の出会い ― 医学の近代化が始まった時代

今の医療に欠かせない、衛生面での大きな飛躍が見られた重要な時代です。この頃、日本は何をしていたか、、結構大変な時代です。黒船来航(1853年)、大政奉還(1867年)、まさに幕末の真っ只中です。緒方洪庵が適塾を開いたのが1838年と言われていますので、日本でも西欧の進んだ医学(蘭学)を取り入れようと必死だった時代とうかがえます。調べていて意外でしたが、第10代の塾頭には福澤諭吉が名を連ねています。

「JIN-仁-」に見る、医術と時代のギャップの魅力

そういえば、、漫画やドラマで人気を博した「JIN-仁-」は現代の脳外科医がこの時代にタイムスリップした話でしたね。まさにいろいろな「医術」が大きく変わった時代でもあり、現代とのギャップが見所の1つでもあったように記憶しています。また見たくなってきました。。

 

 

ではまた!

(加藤基)

 

 

 

参考

フローレンス・ナイチンゲール wikipedia

 

 

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鶏のとさかグラフ

 

 

ジョゼフ・リスター wikipedia

 

<記事更新:2025年7月17日>

 

FAQ

Q1. ナイチンゲールはなぜ有名なのですか?

A1. 衛生管理の改善と看護教育の整備、そして死亡原因の統計「視覚化」によって、近代看護の基盤を築いたからです。

 

Q2. ジョゼフ・リスターの功績は?

A2. 手術時の消毒法を初めて実践し、創部感染の予防に成功。現代外科の無菌技術の礎となりました。

 

Q3. 当時の日本はどんな状況でしたか?

A3. 幕末期であり、西洋医学の導入が進んでいた時期。適塾や福澤諭吉の活躍があったことでも知られています。

 

備えあれば憂いなし。

当院でおこなっている間葉系幹細胞治療は、準備に約1カ月かかります。脂肪幹細胞を臍の横の皮下脂肪から米粒大採取、附属のCPC(培養施設)で培養し、凍結チューブに入れてマイナス196℃で保管します。使用する際には解凍して数日間培養し、最善の状態に戻してから点滴または注射で投与します。

凍結した幹細胞は1年間保存できますので、その間に使用してもよいし、安心のために取っておいても構いません。保存自体は無料です。

幹細胞治療は、急性疾患を含むさまざまな病態に有効とされています。急に幹細胞治療が必要になった場合に備えて、ご自分の幹細胞を保存しておくのは決して無駄ではないと思います。(*当院では、まだ適応が取得できていない対象疾患もありますので、幹細胞が使用できる疾患についてはクリニックにお問い合わせください。)

 

 

2020年北京で重症COVID-19肺炎に対する幹細胞点滴の臨床試験が行われました。7名に対して幹細胞点滴を実施し、14日間観察しました。投与2日後から呼吸器等症状が劇的に改善し、血液検査では炎症に関わる免疫細胞の減少と、炎症性サイトカインの減少を認めたそうです。幹細胞の強力な免疫調節作用によるものと推測されます。

Transplantation of ACE2- Mesenchymal Stem Cells Improves the Outcome of Patients with COVID-19 Pneumonia

http://www.aginganddisease.org/EN/10.14336/AD.2020.0228

 

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致死的COVID-19肺炎患者の胸部CT像

1月23日(Jan23、1段目)には肺炎を認めなかったが、1月30日に両側に肺炎像(Jan30、2段目 白い部分が肺炎)を認め、1月31日に幹細胞点滴を実施した 。2月2日(Feb2、3段目)に全肺野まで肺炎が進行するも、2月9日(Feb9、4段目)には大半の肺炎が消失、2月15日(Feb15、5段目)すりガラス状陰影が一部残存するのみとなった(上記文献より転載)

胎盤由来の造血幹細胞から作成したNK細胞(免疫細胞)を、コロナウィルス感染症治療に用いる臨床試験に対して、アメリカFDAがゴーサインを出しました。

胎盤には幹細胞(造血幹細胞と間葉系幹細胞)が含まれています。胎盤に付着しているものに臍帯(へその緒)がありますが、臍帯から得られる臍帯血には造血幹細胞が多く含まれ、造血幹細胞移植を行う上でとても重要な存在であることはご存知かもしれません。胎盤も臍帯と同じく、幹細胞の採取材料として用いることができるんですね。

造血幹細胞はあらゆる血液の源です。赤血球や白血球、血小板など、血管を流れている細胞はすべて造血幹細胞から分化します。そのなかにNK細胞という免疫細胞があります。N細胞は体内に侵入した異物や病原体を攻撃して排除する免疫細胞です。

アメリカ、ニュージャージー州のCelularityが開発したのは、CYNK-0001という"Off the Shelf"(=必要な時にすぐに使える)細胞製剤です。CYNK-0001は、胎盤から造血幹細胞を抽出し、NK細胞に変化させて保存したものです。これをコロナウィルス感染症の治療のために使用した場合、有効かどうか臨床試験(IND=investigational new drug applicationとしての使用)が計画され、これに対してFDA(日本の厚生労働省に相当するアメリカの政府機関)が承認を与えました。最大86人まで患者に投与される予定です。

 

New York Timesの報道記事

https://www.nytimes.com/2020/04/02/health/stem-cell-treatment-coronavirus.html

Forbsの記事

https://www.forbes.com/sites/alexknapp/2020/04/02/fda-gives-green-light-to-test-a-treatment-against-covid-19-coronavirus-that-flattens-the-curve-in-patients/#7a55a1354b57

開発者とニューヨーク市長の対談映像

https://youtu.be/3CCbcLIlkFU

90人の重症コロナウィルス感染症患者に対して、間葉系幹細胞または偽薬の投与を3回おこない、有効性を確かめる臨床試験が中国で行われています。間葉系幹細胞の由来は明らかにされていませんが、緊急を要するため、他人由来の幹細胞を凍結保存したものと推測されます。有効性が確認されることを祈っています。

https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04288102?cond=Corona+Virus+Infection&draw=3&rank=20

尚、これに先んじて、7人に投与するパイロット試験が行われ、有効性が確認されています。

http://www.aginganddisease.org/EN/10.14336/AD.2020.0228

 

幹細胞から分泌されるエクソソームは、細胞から放出される小さなカプセルです。中身はサイトカインや成長因子など、細胞同士の情報伝達に重要なたんぱく質が含まれています。近年、エクソソームの存在が知られるようになり、抽出することがも可能になっています。幹細胞を培養すると、副産物として得られます。

また、エクソソームは、さまざまな機能を持つたんぱく質を含むため、薬の様に使用できることがわかってきました。コロナウィルス感染症は上気道(喉や気管)の感染から始まります。エクソソームは噴霧剤のように使用できますので、エクソソームを吸入させることでコロナウィルス感染症が治療できないか確かめる試験が計画されています。上海の病院で30人を対象に実施される予定です。

https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04276987?cond=Corona+Virus+Infection&draw=3&rank=19

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