2023年1月アーカイブ

肌再生治療のメカニズム

| コメント(0)

こんにちは。アヴェニューセルクリニック院長の井上啓太(いのうえけいた)です。

今回は前回に引き続き、肌再生治療のメカニズムの詳細について解説していきます。

 

本記事の要約

脂肪由来幹細胞を肌に注射する臨床試験により、エラスチンを含む弾性線維と毛細血管が増加し、肌の弾力性や潤いが向上する効果が確認されました。2004年の有名形成外科誌に掲載された研究で、肌再生の科学的メカニズムが実証された、と報告しています。

 

 

前回のブログはこちらをご覧ください。

脂肪幹細胞による肌治療の詳細

 

肌の老化に対して幹細胞TOPs細胞)の注射を打った時の臨床試験が行われています。

臨床試験というのは、人を対象にして科学的にデータを取って検証するという試験です。

一般的な臨床実験は、治療をした方としなかった方を比較するデータを取るのですが、肌の美容に関する実験は厳密には難しいです。

その様な中で、非常に優れた臨床試験があります。

フェイスリフトで皮膚を引っ張って切り取る手術を予定されている、イタリアとブラジルの方々で6人の患者さんが協力しています。

切り取る予定の皮膚に幹細胞を打って、もう片方は打たないという臨床試験を行いました。

その後に皮膚を切り取って顕微鏡で観察して、どの様な変化が起きるのかを調べました。

2014年にPlastic and Reconstructive Surgery(和訳:形成外科および再建外科)という形成外科の中で、一番信頼ができる医学誌の中に掲載された論文をご紹介します。

 

 

 

弾性線維の比較

 

こちらは、皮膚の断面図になります。

表皮.pngのサムネイル画像

 

表皮真皮皮下脂肪があります。

この3つの組織の詳しい説明はこちらのブログをご覧下さい。

脂肪幹細胞による肌治療の詳細

 

 

臨床試験で細胞を打ってない組織を比較したところ、

肌の張りを生む役割をするエラスチンである弾性線維(だんせいせんい)

細胞を打った側では、非常にたくさん増えている事がわかります。

 

細胞を打っていない状態の弾性線維は細いですが、

それに対して、細胞を打った方の弾性線維は太くなっています。

 

毛細血管の比較

毛細血管にも変化があります。

やはり細胞を打った方のデータは、皮下脂肪の境目辺りにたくさんの新しい血管があります。

 

この論文でわかる事は、細胞を肌に注射すると弾性線維と血管が増えて、肌の弾性が増すという事です。

この様なメカニズムがあり、幹細胞治療によって肌再生の効果が出るという事が証明されています。

 

今回の内容は動画もご覧いただけます。

 

<記事更新:2024年6月29日>
 
 

FAQ

Q1. どんな研究で効果が証明されたのですか?

A1. フェイスリフト手術予定者を対象に、片側に幹細胞注射を行う臨床試験が実施され、施術部位で組織学的変化が確認されました。
 

Q2. 肌にどんな変化がありましたか?

A2. 弾性線維(エラスチン)が太く増加し、毛細血管の密度も上昇したことで、弾力性や血流が改善しました。
 

Q3. 幹細胞治療の効果はどのくらい継続しますか?

A3. 長期持続性については追加研究が必要ですが、細胞注射による即効的な組織変化は確認されています。
 

脂肪幹細胞による肌治療の詳細

| コメント(0)

こんにちは。アヴェニューセルクリニック院長の井上啓太(いのうえけいた)です。

 

井上先生プロフィール入り.png

今回は前回に引き続き、脂肪幹細胞による肌治療の詳細について解説していきます。

前回のブログはこちらをご覧ください

間葉系幹細胞の歴史と再生医療で用いた時にどのような効果があるのか

 

肌が老化するとは?

肌は表皮(ひょうひ)真皮(しんぴ)の二層に分かれています。

その二層の下に、皮下脂肪(ひかしぼう)があります。

表皮は、古い細胞が剥がれ落ちていくターンオーバーを繰り返しています。

 

表皮.png

 

新しい肌は、真皮の基底層から分裂していき表皮となり、最後は角質となり剥がれ落ちます。

真皮.png

若い時は、ターンオーバーが早く活性化されています。

歳をとるとターンオーバーが遅くなり、古い表皮が残ります。

その中にシミの原因であるメラニンや色素、古い角質が溜まってしまいます。

また、保湿する役割をするヒアルロン酸も減っていきます。

そのため、シミ・シワ・くすみ・乾燥などが目立ってしまいます。

 

表皮はターンオーバーが遅くなりますが、真皮の方も老化の影響を受けて細胞成分が少なくなってしまいます。

真皮の中にあるコラーゲンを作り出す、線維芽細胞(せんいがさいぼう)が少なくなり皮膚が薄くなっていき、張りがなくなってしまいます。

真皮はターンオーバーをしないので、シミの原因であるメラニンが沈着します。

また、皮下脂肪も減ってしまい、たるみの原因になります。

 

脂肪幹細胞を使った肌の再生医療

肌の再生医療のコンセプトは、この様な老化状態を改善するという事になります。

幹細胞治療の手順を簡単に説明すると、まず自分自身の脂肪組織を採取して体外で培養します。

培養した脂肪幹細胞を肌に注射すると、老化状態が改善されます。

なぜ、老化状態が改善されるかというとパラクライン作用というものがあります。

培養して肌に注射された幹細胞は、その場所に根付いて周囲に成長因子が分泌されます。

成長因子は別名で増殖因子細胞増殖因子とも呼ばれています。

パラクライン作用は、分泌された物質が分泌した細胞の周囲の細胞に作用する事をいいます。

 

表皮への効果

パラクライン作用により、成長因子を受け取った表皮細胞が活性化されます。

その結果、表皮が分裂して厚くなっていき、保水力が上がり、透明感が出やすくなります。

また角質が減って肌がなめらかになるといった効果が出てきます。

 

この成長因子は上皮成長因子(EGF(Epidermal Growth Factor))

このEGFは、値段が高めの化粧品にも配合されています。

ただ肌はバリア機能が強いので、表面から化粧品を塗ってもなかなか肌の中まで届かない事があります。

幹細胞治療は、注射を打つ事によって内部に成長因子を直接届かせる事ができるので、効果が高い治療となります。

 

真皮への効果

脂肪幹細胞は、線維芽細胞に変化するという性質があります。

脂肪幹細胞が線維芽細胞の様な働きをして、コラーゲンやヒアルロン酸が作られていきます。

その結果、肌の厚みが出てきて潤いが出てきます。

特に透明感が出てきますので、肌がだんだんと白くなってくるといった効果が見られます。

また血管内皮細胞増殖因子(VEGF(vascular endothelial growth factor))という作用もあります。

この因子の作用で、真皮や皮下脂肪内の血管が新しく作られていきます。

血管が増えていきますので、肌の血流が良くなり明るい肌になる効果もあります。

 

今回のまとめ

脂肪由来幹細胞(TOPs細胞)を肌に注射すると、老化状態を食い止めることができます。

肌の再生医療、幹細胞治療にご興味のある方はお気軽にご相談下さい。

今回の内容は動画もご覧いただけます。

 

「朝に道を聞かば、夕べに死すとも可なり。」 論語 里仁

 

前回、老化と記憶についての回がありましたが、今回は老化細胞についてです。老化はどこから始まるのか、についてこれまでもさまざまな議論がされていましたが、また一つ明らかとなったことがあります。それは老化細胞の単離・働きについてです。

 

これまで老化というと遺伝子の一部に寿命を決める部分(テロメア)があって、細胞分裂を繰り返すうちに少しずつ短くなり、ついには細胞自体が分裂しなくなってしまうことが老化と考えられてきました。ほかにもさまざまな発見はありましたが、老化を促す細胞や具体的な治療方法について明らかとはされてきていませんでした。

 

実験では、サルコペニアという筋肉が“老化”するマウスをもちいて、その骨格筋をつかいました。マウスの骨格筋の中にこれまで有益だとされてきた細胞の一つが、実はそうでもないのではないかと疑い、評価したのです。この細胞は数が少ないものの、老化関連分泌型(senescence-associated secretory phenotype: SASP)3細胞を経てシグナルタンパク質(指令となる物質)を分泌し、組織を線維化させることがわかりました。

 

さらにこの実験では老化細胞の単離に成功し、老齢マウスに多く存在すること、障害部位に多くみられ その部位で老化細胞が増えやすいことを示しました。

 

老化細胞は2021年 本邦 東京大学の中西らが発見した、GLS1阻害剤(セノリティクス薬)で死滅することが知られており、Natureの著者らもダサチニブ・ケルセチンという薬剤で減らすことにより筋の回復がよくなったことを確認しています。また若いマウスであっても老化細胞を減らすことで、筋肉の修復がさらに改善されることも認めました。

 

これらの結果が示すことは、老化細胞という見える「敵」がはっきりしたこと、それらを限定的に死滅させる薬剤が使えるようになってきたことで、老化を食い止め、いわば若返るための具体的な戦略が立てられるようになったかもしれないということです。

 

2040年には医療における実現化を目指すとして、中西先生らはムーンショットプロジェクトとしてわが国から強い支援を受け、日夜開発に取り組んでおられます。

 

老化細胞を選択的に取り除く。秦の始皇帝が追い求めたという不老長寿の薬は、いまわれわれの近くにあるのかもしれません。

 

2600年の時を経て、孔子でさえ、道を知ってなお、生きることを望む(ことができる)時代がきたのかもしれませんね。

 

ではまた!

 

(加藤基)

 

参考資料

 

1Nature 613, 30-31 (2023)

doi: https://doi.org/10.1038/d41586-022-04430-9

2.Science. 2021 Jan 15;371(6526):265-270.

 doi: 10.1126/science.abb5916.

3.ムーンショットプロジェクト紹介

 

このアーカイブについて

このページには、2023年1月に書かれたブログ記事が新しい順に公開されています。

前のアーカイブは2022年12月です。

次のアーカイブは2023年2月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。