2020年5月アーカイブ

当院、木曜日のリンパ浮腫外来を担当している吉松英彦医師が、アメリカのマイクロサージェリー発祥の地である、The BUNCKE CLINIC(「バンキー・クリニック」カリフォルニア州・サンフランシスコ)で客員教授として講演を行いました。コロナウィルスの影響によりオンライン講演となりましたが、沢山の反響を頂きました。

Buncke Clinic, Online Lectureのページ (アルファベット順につき、吉松先生は最後尾に表示されています)

 

講演内容は、当院のリンパ管静脈吻合術(LVA)の術前検査でも採用している超音波検査を、SCIP皮弁という難易度の高い皮弁に使用することで、手術が安全・正確に行えるという内容です。

(動画は下の画面をクリックして下さい)

(12月30日の時点でに人気記事第2位となっています→Bauback Safa - YouTube

リンパ浮腫に対するリンパ管静脈吻合術(LVA)では静脈やリンパ管を、術前にしっかり検査してから実施することが重要です。リンパ管静脈吻合術(LVA)については「手術」のページをご覧下さい。

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BUNCKE CLINICはアメリカのマイクロサージェリーの始祖であるDr. Harry J. Bunckeにより、1970年に創立されました。残念ながらDr. Bunckeは2008年に86歳で亡くなりましたが、彼がサルの足の指を手へ移植すること(足指移植)に成功したことが大きなブレイクスルーとなり、アメリカのマイクロサージェリーが発展することとなりました。また、Dr. Bunckeは当院顧問の波利井清紀と同時期にマイクロサージャリーを始めた外科医です。現在、BUNCKE CLINICは、アメリカ随一のマイクロサージェリーのハイボリュームセンターとして、リンパ管静脈吻合術(LVA)を含む多種多様のマイクロサージャリーをおこなっており、これまでに27名の教授を輩出しています。BUNCKE CLINICで講演することは、マイクロサージャンにとって大変名誉なことであり、日本人として講演したのは吉松医師が初めてです。

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往年のDr. Harry J. Buncke (This Week in California Historyより転載)

 

Dr. Harry J. Buncke Wikipediaのページ

The BUNCKE CLINIC の病院ホームページ↓

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リンパ管浮腫は手足を中心としたいわゆる体の端っこである、末梢の問題です。このリンパ管、以前のコラムでも書きましたが(1. リンパと循環)、古くからリンパ管に関する解剖が研究されてきました。そのなかで、中枢神経、つまり脳にはリンパ管は「ない」と長年されてきたのですが、近年になって脳にもリンパ管は存在する、ってことがわかりました。

基礎研究の分野(動物やシャーレの中で主に行う研究)でリンパ管分野の第一人者と言われる、フィンランドのアリタロ先生のグループからの報告です。

さらに彼らは脳のリンパ管の働きを調べて、脳の高分子の代謝に関わっているということを発見しました。脳の代謝性の病気に対して、リンパ管で培われた治療や研究成果が応用できる可能性を示していて、これまでとは異なるアプローチの発展につながるかもしれません。私のようなリンパ管オタクのみならず、脳を専門とした先生方、患者さんたちに貢献できるかもしれず、ワクワクします。

 

内容をかいつまんで説明すると、以下のようになります。

・マウス(小さなネズミ)を用いた実験で研究した。

・脳にはリンパ管がないとされてきましたが、硬膜(脳を包む膜)には終分化(完全にリンパ管な状態)になったリンパ管が確認された。

・硬膜のリンパ管は脳の間質液を首の深いリンパ節へ送っている。

・リンパ管を作るのに必要な遺伝子がないマウス(特殊なノックアウトマウス)では硬膜にリンパ管が見られない。

・ノックアウトマウスで確認された、硬膜のリンパ管欠損状態では、脳に注射した高分子の代謝(クリアランス)が非常に遅い。またその高分子が首のリンパ節へ流れ出るのが遅い。

 

これらひとつひとつのデータが緻密な作業の上に成り立っていて、脱帽します。

患者さんを診察し治療する「臨床」と異なり、「基礎」はまさに医学の幹にあたる部分を掘り下げます。いろいろな領域で医学が発展して、これまでにわからなかったことがわかるようになり、できなかった治療ができるようになり、より良い生活が遅れるようになります。

 

また一つ、新しい世界への扉が開かれたように思いつつ、これを皆さんに届けることもまたわれわれ医療者の使命だなあと、感じているこの頃です。

ではまた!

 

(加藤基)

 

参考文献

A dural lymphatic vascular system that drains brain interstitial fluid and macromolecules.

Aspelund A, Antila S, Proulx ST, Karlsen TV, Karaman S, Detmar M, Wiig H, Alitalo K. J Exp Med 212: 991-9, 2015.

 

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Kali Alitalo先生

ヘルシンキ大学研究室HPより引用

https://www.helsinki.fi/en/researchgroups/translational-cancer-biology/people

木曜日のリンパ浮腫外来を担当している吉松英彦医師執筆の教科書が刊行されます。リンパ浮腫に対するリンパ管静脈吻合術(LVA)の体位に関する内容です。

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Technical Aspect of LVA / Chapter  3.1 Anastomosis Techniques / Section 3.1.2 Patient Positioning in LVA - Alternatives
Dr. Hidehiko YOSHIMATSU / Cancer Institute Hospital,
and Keita Inoue, Avenue Cell Clinic / Tokyo, Japan

 

 

リンパ管静脈吻合術(LVA)は、リンパ管と静脈の交差する場所を手術顕微鏡の真下において行います。手術の対象となるリンパ管は数本あり、上肢の場合、前腕から肘、上腕の内側に多く、下肢の場合は大腿・下腿とも内側に多く存在します。リンパ浮腫の患者さんは仰向けで寝た状態で手術を行う事が一般的ですが、一部の重要なリンパ管は仰向けでは手術しにくい場所にあります。

 

とくに、肘の外側や膝の内側のリンパ管に対して仰向けのまま無理に手術を行おうとすると、視野が悪いために時間がかかるばかりか、場合によってはリンパ管と静脈の吻合のクオリティー自体が下がり、リンパ浮腫の治療効果に影響してしまうこともあり得ます。

 

アヴェニューセルクリニックでは、ベストの結果を得るため、下記の部位のリンパ管静脈吻合術については患者さんに特別な体位をとって頂くようご協力を頂いています。

 

1. 膝の内側

リンパ浮腫のある下肢を下にして、横向きに寝て頂きます。反対側の膝を軽く曲げ、前方に出します。手術部位となる膝の内側から裏側がよく見えるようになります。いわゆる「シムス位」に近いですね。

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2. 肘の外側

肘を完全に曲げてしまい、肘の下にクッションを置きます。上半身は仰向けよりも、少しだけ肩を浮かせて寝ると楽かもしてません(肩の下にもクッションを入れる場合もあります)。肘の外側が真上に見えるようになります。

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3. 上腕の外側

完全に横向きで寝て頂きます。リンパ浮腫のある腕をクッションに載せると上腕の外側が真上になります。

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リンパ管静脈吻合術は創が小さいので、身体の負担はほとんどありませんが、手術顕微鏡を使った細かい操作が必要ですので、少し時間が係る手術です。できるだけ楽な姿勢で手術を受けていただけるよう、手術中の姿勢や手術台のクッションなどを工夫しています。

 

リンパ浮腫の手術(リンパ管静脈吻合術:LVA)についての詳しい情報は、手術のページをご覧下さい。

 

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