2022年5月アーカイブ

再生医療を受ける人が多くなってきて、安全性を確保するのって大事だよね、そのためにはトンチンカンなことをやっている施設がないように決まりを作りましょう、というのが再生医療法です。

 

2013年11月27日に公布され、8年以上経過していますので、けっこう経ったなという印象ですが、私が形成外科医の歩みを始めたころにはまだ法整備されていませんでした。形成外科の専門雑誌などに紹介されていて、勉強したいなあなんてぼんやりと思っていた治療が、実際に法規制の対象になったということを鮮明に記憶しています。悪い意味ではなくて、ちゃんとした決まりに基づいてやりましょうという対象になったという意味ですが、法といわれると少し背筋が伸びる思いです。

 

さてざっくりいうと安全性の観点から3種類に分類されていて、松・竹・梅あります。一般的なことですが、薬としての効果が強いもの≒副作用も強く出るリスクがあるもの、ということでそれぞれ強いものから順に第1種,第2種,第3種と分類されています。

 

だいたい、

iPS細胞などから作った細胞シートを投与するのが第1種

自分の細胞をとってきて、幹細胞などを培養してから投与するのが第2種

自分の血液をとってきて、重要な部分だけを集めたものを投与するのが第3種

くらいのイメージです。

 

さて2020年から見直しに関するワーキンググループ(専門家の会議)が進んできましたが、2021年11月にワーキンググループとりまとめが報告されています。

 

今回新たに提案されている内容として興味深かったのは、

遺伝子治療 とくにin vivo遺伝子治療(遺伝子に作用する薬を投与して患者さんの体の中で反応を起こす治療法)に対する法的枠組みが追加、

加速度的に進む技術発展に対して将来的に可能となりそうな技術を想定した法的枠組みをあらかじめ設定される、

PRP(血液の中から重要な成分を抽出して投与する治療法)が限定つきではあるが除外対象となる、

エクソソーム(細胞から発せられるメッセージを包んだ袋のようなもの)等は現時点では対象としない

などでした。

 

いやー法整備って全くの素人でわからないことだらけですが、これから新しい技術がどんどんと出てくる中で、それらを予想して前もって手を打っていく、というのは実に大変そうです。

遺伝子治療の定義も、「最終的にタンパク質等の発現、発現制御のいずれかを行う技術」その通りですが、言葉にするのって大変ですよね。当然ですが、DNAは転写されてタンパク質の発現に係る、改めてタンパク質の重要性を感じました。

 

ではまた!

 

(加藤基)

 

参考資料

wikipedia 再生医療等の安全性の確保等に関する法律

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%8D%E7%94%9F%E5%8C%BB%E7%99%82%E7%AD%89%E3%81%AE%E5%AE%89%E5%85%A8%E6%80%A7%E3%81%AE%E7%A2%BA%E4%BF%9D%E7%AD%89%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E6%B3%95%E5%BE%8B

 

NHKニュース

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220428/k10013602691000.html

 

厚生労働省HP 再生医療等安全性確保法の見直しに係るワーキンググループ

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei_127344_00001.html

 

 

「徳は孤ならず、必ず隣あり。」 論語 里仁

 

体には五臓六腑、様々な臓器があり、それらがお互いに助け合って生きています。まさに隣にあるその臓器たちが連携しあっているのですが、一つ一つの臓器の働きだけでなく、お互いのやりとりに注目が集まっています。

 

本日は世界的にも1番有名くらいである雑誌nature、、の姉妹誌で勢い爆上げ状態のnature biomedical engineeringの今月号 表紙を飾った論文の紹介です。

 

ミニ生物をシャーレ上に作って、臓器の間で何が起こっているのかを観察・評価できるモデルを作ってしまったと言う話です。臓器を細胞だけでバラバラにしたのち、特別な条件で育てる(培養)と、3次元に形を作っていきます。3次元培養、1980年代後半から研究は進められていましたが、ある時革命がおきました。

 

何にでもなれてしまう幹細胞(多分化能を持つ細胞)がその大元の細胞として加えられるようになってから、それぞれの臓器をミニチュアで作ってしまい、どのお薬が効果ありそうかなとか、どんな働きをしているのかなとか、実験室で調べることができるようになりました。2010年前半、オルガノイドの誕生です。

 

その後およそ体のほとんどの臓器のオルガノイドが研究され、ついにはそれぞれの臓器の間でのやりとりまでシャーレ上で検討できる時代がやってきている、実に驚きました。

 

研究って1箇所の研究チームだけが突出してすごいこともありますが、似たようなテーマで連動していることも多々あります。他にも臓器のそれぞれの連絡網を調べようと言う研究は進んでいて、mRNA(メッセンジャーRNA)やエクソソームなど、追って伝えて行けたら良いなと思います。

 

 

ではまた!

 

(加藤基)

 

参考資料

Ronaldson-Bouchard, K., Teles, D., Yeager, K. et al. A multi-organ chip with matured tissue niches linked by vascular flow. Nat. Biomed. Eng 6, 351–371 (2022). https://doi.org/10.1038/s41551-022-00882-6

 

 

再生医療の「いま」を専門家たちが語る場。その大きな一つが、日本再生医療学会総会です。今年は3月に完全オンラインで開催されました。

 

全国各地の再生医療に携わる専門家がそれぞれの研究や実績について語り、様々な議論を交わすことで、知識を深めたり着想を得たり。次の研究や臨床に活かすための情報収集の場です。

 

なかでもシンポジウムは、トピックごとに焦点を当てて、選りすぐりの専門家が壇上に上がります。医師になりたての頃、シンポジストの先生方がかっこいいなと憧れた記憶が蘇ります。

 

さてさて、脂肪由来幹細胞を中心とした間葉系幹細胞に関するトピックでは、ALS(筋萎縮性側索硬化症;難治性の神経の病気です)、認知症、肝硬変、IgA腎症と様々なものに対する応用が発表されていました。神経や内臓の病気に広く応用されていることがわかります。

 

また、学会として独創的な取り組みとして、中高生のためのセッションと言うものがあります。講演を聞いたり、学会を見たり、発表したり、作文を書いたりするようです。今年はコロナの影響で作文だけの開催でした。

 

今年の作文金賞は、「感じる必要のない苦痛」と題した高校一年生の作品でした。共創という今回の学会のテーマに沿った内容で、皆が当事者意識を持つことで感じる必要のない苦痛を取り除くことができる社会を共に創ることを目指したいと、力強いメッセージです。

 

日本が誇る先端分野の一つである再生医療の専門家たちが、若い人たちの興味を促し 後の世代にバトンを渡していく取り組みとして、とても良いことだなと感じました。自分が高校生の時にこのことを知っていたら、きっと参加したいと思っただろうなと。ま、作文は特に苦手な分野でしたし、受賞なんてとてもできなかったでしょうが。

 

ではまた!

 

(加藤基)

 

参考資料

第21回 日本再生医療学会総会プログラム

http://www.congre.co.jp/jsrm2022/dl/program.pdf

 

中高生のためのセッション 金賞作品(同学会HPより)

http://www.congre.co.jp/jsrm2022/dl/prize_gold.pdf

 

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