2022年12月アーカイブ

こんにちは。アヴェニューセルクリニック統括医師の井上啓太(いのうえけいた)です。

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前回間葉系幹細胞(かんようけいかんさいぼう)は体の細胞の親玉、ES細胞・iPS細胞の違いなどの概要について説明しました。

今回は、間葉系幹細胞のの発見の経緯と再生医療で用いた時にどのような効果があるのかわかりやすく解説していきます。

前回のブログはこちらをご覧ください。


肌再生治療なぜいま脂肪幹細胞なのか

 

本ブログの要約

アヴェニューセルクリニック統括医師の井上啓太が、間葉系幹細胞の歴史と特徴について解説しています。1960年代に骨髄から発見された間葉系幹細胞は、造血幹細胞とともに存在し、様々な組織に分化する能力を持っています。2000年代初頭には皮下脂肪からも採取可能となり、患者様への負担が軽減されました。間葉系幹細胞には、生体維持機能、抗炎症作用、免疫調整能という3つの主要な特徴があります。現在では、TOPs細胞技術により少量の脂肪組織から培養が可能となり、肌の再生医療や若返り治療に応用されています。
 

間葉系幹細胞の歴史

最初に間葉系幹細胞は、骨髄の中から発見されました。

 

間葉系幹細胞が発見された「骨髄」

その骨髄の中には、2種類の幹細胞があります。

一つは造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)と、もう一つは間葉系幹細胞です。

 

間葉系幹細胞とは

間葉系幹細胞とは、体に自然に備わっている体性幹細胞で、骨細胞・軟骨細胞、脂肪細胞、神経細胞、幹細胞などさまざまな細胞に分化できるといわれている細胞です。傷ついた組織にとって栄養となる成分を放出します。骨髄・脂肪・歯髄・へその緒・胎盤などに存在します。

 

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間葉系幹細胞と造血幹細胞の違い

1960年代に、白血病の治療として骨髄移植が始まりました。原子爆弾などで全身に放射線を浴びた際に、骨髄の機能がなくなり血液を作ることができなくなり白血病になってしまいます。

骨髄から血液を作る機能がなくなってしまうため、これを骨髄移植で治療しようという研究の過程で造血幹細胞を発見したのが、ジェームズ・ティル先生とアーネスト・マカロック先生という方です。

赤血球・白血球・血小板・リンパ球などの血液細胞のもとになる幹細胞があり、それが造血幹細胞であることが分かりました。造血幹細胞を移植すると、白血病の患者さんがまた血液を作れるようになります。

また、その研究の過程で、アレクサンダーフリードシュタインという研究者によって間葉系幹細胞が発見されました。10万個の骨髄細胞の中に1個という確率で存在する珍しい細胞が間葉系幹細胞と名付けられました。研究を進めていくと、造血幹細胞の働きを骨髄の中でサポートする機能を持っているということがわかってきました。

さらに骨や脂肪・筋肉・血管など色々なものに変化する性質があるということもわかってきました。他の組織に変化していくので、再生医療に使えるのではないかという事で今日まで研究され、臨床応用が始まりました。

 

 

脂肪由来間葉系幹細胞の発見

2000年代の初頭に、間葉系幹細胞は骨髄だけではなく、他の場所からも採れるという事がわかってきました。それが現在主流となっている皮下脂肪(ひかしぼう)から採取する間葉系幹細胞です。

脂肪吸引という手術後の脂肪の中を調べてみたら、間葉系幹細胞が存在している事がわかりました。骨髄から間葉系幹細胞を採取するためには、全身麻酔をかけて太い注射針で骨髄の中から抽出する必要があります。

一方、脂肪の中の間葉系幹細胞はおなかの脂肪を少し採取すれば済みますので、患者様の負担がかなり減ります。当院と東京大学整形外科が共同で開発したTOPs細胞は、さらに少ない脂肪組織から良質な細胞に培養することができます。

 

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間葉系幹細胞の3つの特徴

 

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1、生体維持機能

体の機能を維持し、恒常性をサポートする役割があります。これはホメオスタシス(生体恒常性)とも呼ばれています。

 

2、抗炎症作用

風邪を引いたり、怪我をしたりすると炎症が起きます。どこか不調があるとそこが赤くなったり痛くなったりしますが、それは炎症によるものです。間葉系幹細胞には、その炎症を鎮める役割があります。

 

3、免疫調整能

本来、感染症など外からの攻撃に対抗するのが免疫の機能です。しかし、この免疫機能も暴走してしまう事があります。アレルギーも免疫の暴走のひとつです。

また、免疫細胞が自分の体を攻撃してしまう状態を自己免疫疾患といいます。間葉系幹細胞には、アレルギーや自己免疫疾患を緩和する働きがあると考えられています。

 

次回は、この間葉系幹細胞の3つの機能についても解説していきます。

 

間葉系幹細胞の歴史まとめ

間葉系幹細胞の歴史は、骨髄由来幹細胞から始まり、研究が重ねられ脂肪由来幹細胞が発見されました。

現在は、脂肪吸引ではなく、小さい脂肪片から培養できる技術も開発されました。

この脂肪幹細胞(TOPs細胞)を用いた肌の再生医療・若返り治療について今後も解説していきます。

 

今回の内容は動画でもご覧いただけます。

 

FAQ

Q1: 間葉系幹細胞とは何ですか?また、どこから採取できますか?

A1: 間葉系幹細胞は、体内の様々な組織に分化できる能力を持つ幹細胞です。当初は骨髄から発見されましたが、現在では皮下脂肪からも採取できることがわかっています。脂肪からの採取は患者への負担が少なく、より簡便な方法として注目されています。

Q2: 間葉系幹細胞にはどのような特徴や効果がありますか?

A2: 間葉系幹細胞には主に3つの特徴があります。1) 生体維持機能(ホメオスタシス)、2) 抗炎症作用、3) 免疫調整能です。これらの特徴により、炎症を鎮める効果や、アレルギー、自己免疫疾患を緩和する働きがあると考えられています。

Q3: TOPs細胞とは何ですか?

A3: TOPs細胞は、アヴェニューセルクリニックと東京大学整形外科が共同で開発した技術で、少量の脂肪組織から良質な間葉系幹細胞を培養することができます。この技術により、従来の方法よりも患者への負担が少なく、効率的に幹細胞を得ることが可能になりました。
 
 
<記事更新:2024年11月12日>

「少壮、幾時ぞ。老いを奈何。(しょうそう、いくときぞ。おいをいかん。)」 秋風辞 武帝

 

手術をしていると、「あれあれ、これこれ」とモノの名前がすぐに出てこないことが増えてきました。外科医あるあるかもしれませんが、看護師さんも慣れたもので、スムーズに必要なものを渡してくれます。ドラマなどでは「メス!」なんていいますが、実際には何も言わずに手だけ出したら、持ちやすいように渡してくれるなんてこともしばしばあります。

 

本日は老化による記憶の低下に「待った」をかける、医療についておなじみNatureからひとネタお伝えします。

 

脳には海馬(かいば)と言われる記憶をつかさどる部分がありますが、ほかの脳と同じように脳脊髄液で保護されています。この脊髄液に若者の脊髄液を注射してやると、記憶がよくなったという動物実験の報告です。

 

脳は神経を通じて細胞同士でコミニュケーションをしていますが、効率よく伝達するためにミエリン鞘という囲いで神経は保護されています。若い脳脊髄液は成長因子に富んでいて、特にFGF17とよばれる成分がそのミエリン鞘を元気にする経路を活性化するとのこと。

 

脳のリンパ管が発見されて、もしかすると老廃物の代謝経路としてアルツハイマー型認知症に関わっているかもしれない、なんて2年半前にコラムでお伝えしていたことを思い出しました。(「脳のリンパ管」リンパ浮腫コラム・2020年5月13日

 

さて、今回の話 何が新しいかというと、脳脊髄液が作られる場所が従来の常識と異なるということです。つまり、以前は脈絡叢とよばれる脳を包む膜の一部で作られるとされていましたが、若々しい脳神経細胞から直接分泌されることが示されました。これって細胞が分泌する因子が重要という点で再生医療に通じていますので(パラクライン作用とも呼びます)、今後は再生医療に応用できそうな気もします。

 

若い人のものを入れる、というとこれまでにも様々な治療が実験的に行われてきました。身近なものとしては、プラセンタ注射などは栄養素や成長因子を利用しているといわれています。ドラキュラの吸血もそうでしたっけ?中国の薬膳料理では「同物同治(どうぶつどうち)」と呼ばれ、体の悪い部分と同じ部分を食材として食べることで、治療効果があると考えられてきているようですね。

 

さて、輸血療法でこれをやってしまったアメリカのベンチャー企業もありました。35歳以上の人はすべて対象となって、若者の血液1リットル8,000ドル、2リットル12,000ドルで提供していたようです。今ではFDAという医療安全に関する監査機関が注意したことを受けて廃業したようですが、5年くらいの間に起こったことのようで、驚きました。

 

中世ヨーロッパでは、今では考えられないほど様々な病気に瀉血療法が勧められていたといいます。その対象として若返りも含まれていたようです。よい風に解釈すると、血液が一時的に減量することで新しい血液を作ろうと体が頑張って、今でいう再生医療のようなことが起きた??

 

時代は21世紀。若返りに必要な因子は細胞で行えるようになってきました。当院では皮膚への再生医療に関してYoutubeでの動画を公開しています。

 

一歩前に進んで、再生医療ができるようになったんだよと、中世の人たちに教えてあげたい気分です。

 

ではまた!

 

(加藤基)

 

参考資料

 

Nature (2022-05-19) | doi: 10.1038/d41586-022-00860-7

 

若返り治療のための若者の血を輸血する会社(米国)、FDA忠告を受けて廃業

Blood Transfusion Startup Ambrosia Shuts Down After FDA Warning (businessinsider.com)

 

瀉血療法 Wikipedia

 

再生医療の概略(当院 アヴェニューセルクリニックYoutube)

 

 

 

こんにちは。院長の井上啓太(いのうえけいた)です。

今回のブログでは、幹細胞について解説したいと思います。当院では、TOPs細胞(脂肪由来間葉系幹細胞)を肌に注射する肌の再生医療を行っています。

幹細胞治療の基礎知識

幹細胞とは何か?

幹細胞という言葉を一度は聞いた事があると思いますが、簡単にいうと細胞の親玉、細胞の元といった存在です。

幹細胞は大きく分けると多能性幹細胞(たのうせいかんさいぼう)体性幹細胞(たいせいかんさいぼう)の2つに分類することができます。

 

多能性幹細胞と体性幹細胞の比較.png

 

幹細胞の種類と特徴 - 多能性幹細胞とは

ニュースなどで耳にするES細胞やiPS細胞は多能性幹細胞に分類されます。ES細胞は、胚(受精卵)から培養してつくられた、受精卵の一部の細胞です。

iPS細胞は、ES細胞をモデルにして人工的に作製したものです。

例えば元々皮膚の細胞だったものから血液や神経を作る事が可能になります。多能性幹細胞は卵から作られるので、体のどの部分の細胞にもなれるという特徴があります。

どの細胞にもなれるという事で有用性が高そうに思われますが、そこまで普及はしていません。実際、どの細胞にもなれるためコントロールが難しいという事で実用化が困難ですが、現在、iPS細胞は日本を中心に研究が進んでいます。

幹細胞の種類と特徴 - 体性幹細胞とは

一方で体性幹細胞は、私達の成人の体の中にある幹細胞です。この体性幹細胞は多能性幹細胞と違って、どの細胞になるか役割が決まっています。

例えば、皮膚の体性幹細胞であれば皮膚にしかなりません。血液にも体性幹細胞がありますが、こちらも血液にしかなりません。

私達の体が傷ついたりした時に、組織を回復させるのが体性幹細胞の役割です。体性幹細胞が分裂したり、分化したりすることで、その組織を補充するようになっています

 

体性幹細胞の分裂.png

 

幹細胞の種類と特徴 - 間葉系幹細胞とは

体性幹細胞の中で間葉系幹細胞(かんようけいかんさいぼう)という特殊な幹細胞があります。

間葉とは、体の表面、肌や口の中の粘膜、腸の表面の間を埋めている組織です。この間葉系幹細胞は骨・軟骨・脂肪・リンパ系・血管系の間葉と呼ばれているところにある幹細胞です。

 

体性幹細胞の例(脊椎).png

 

間葉系幹細胞が特殊なところは、多能性幹細胞に似ていて色々な細胞に条件次第で変化する事ができます。間葉系幹細胞は、少し多能性幹細胞に近い性質がある体性幹細胞と言われています。

また、間葉系幹細胞は、骨髄から採る骨髄由来の間葉系幹細胞と、脂肪から採る脂肪由来の間葉系幹細胞が用いられています。脂肪由来の間葉系幹細胞は、別名で脂肪幹細胞や脂肪由来幹細胞と呼ばれます。

また英語表記ではASC(Adipose Stem Cell)やADSC(Adipose tissue-Derived Stem Cell)などとも呼びます。

当院の再生医療のほとんどが、東京大学整形外科と共同研究を行ったTOPs細胞(脂肪由来幹細胞)を使用しています。

 

TOPs細胞.png

 

幹細胞が可能にすること

既述の通り、幹細胞には大きく分けて、多能性幹細胞と体性幹細胞の2種類あります。
さらに体性幹細胞の中に間葉系幹細胞という幹細胞があり、脂肪由来の間葉系幹細胞は私たちのより身近にある再生医療になっています。
 

肌再生治療の可能性

当院では、色々な細胞に条件次第で変化する事ができる幹細胞の特徴からTOPs細胞(脂肪由来間葉系幹細胞)を肌に注射することで、肌の再生医療を行っています。
カウンセリングも行っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
こちらの内容は動画でもご覧いただけます。
 

<記事更新:2024年6月25日>

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