2022年3月アーカイブ

コロナウイルス、一旦落ち着いてきたかと思いきや、再度感染者数が増えてきています。オミクロン株になって、重症化する割合は減ったようですが、後遺症に悩む方が多くいるとも聞きます。そろそろ終わりにして欲しいと思いつつも、正しい情報を得て、正しく恐れることが大切だと思う日々です。

 

今日は脂肪幹細胞を用いた治療が、コロナウイルス感染に対してどのように有効であるか、について論文に書かれていることを解説したいと思います。

何はともあれ、感染で最も重要なのは「炎症」のコントロールです。そして脂肪幹細胞は主に3つの理由から、コロナ感染に対して有効と言われています。

 

まずはウイルス感染と発症の仕組みについて、おさらいしましょう。

 

ウイルスに感染すると、体は反応して、侵入者あり!と警報を鳴らします。それが伝言ゲームのように全身に広がって、身体中で「緊急事態、緊急事態!」と騒がしくなります。この警報をサイトカインと呼びます。

 

コロナに感染してサイトカイン警報が鳴り出すと、免疫細胞は働き出します。サイトカインにも様々な種類があり、それぞれ免疫細胞に対する役割が少し異なります。代表的なものにIL(インターロイキン), TNF(腫瘍壊死因子), IFN(インターフェロン)などがありますが、それぞれ音の違った警報といったところでしょうか。

 

このサイトカイン。体を守るために必要ではありますが、発令が強すぎると、ひどい全身の症状が出ます。大袈裟な状態をサイトカインストームと呼びますが、まさにサイトカイン警報が嵐(ストーム)のように吹き荒れている状態です。ここまでの状態を急性期と呼びます。

 

さらに肺炎などが悪化すると、びまん性肺損傷と呼ばれる状態になります。体は炎症で焼け野原になった部分をなんとか治そうとしますが、元どおりにすることは難しく、代わりに繊維芽細胞がパテのようにペタペタと間を埋めていきます。これを繊維化とよび、完了すると焼け野原ではなくなるのですが、臓器としての働きは悪くなってしまいます。慢性期の症状です。

 

さて本題に戻りまして、脂肪幹細胞有効な3つの理由それぞれについてです。

 

まず脂肪幹細胞は、抗炎症作用が強い。IL 1α, IL 6, IL 12, TNFα, IFNγなどの様々なサイトカインが抑制されます。前回のコラム「脂肪幹細胞とPEG」でも触れましたが、細胞から分泌される液が主な役割を担っています。サイトカインストームも抑制すると研究報告されています。

 

また、脂肪幹細胞は免疫調整能があります。免疫細胞の中でも、サイトカインの警報を受けて「とっさに」行動を起こしてしまう奴がいます。そいつらはウイルスに対して働くわけではなく、動いてしまうことで症状が悪化してしまうだけのものなので、落ち着かせたいわけです。逆にサイトカイン警報では目が覚めずに、本当は働いて欲しい免疫細胞が働かない、ということもあります。それらを修正するのにも脂肪幹細胞は役立ちます。ウイルスだけでなく細菌や真菌の分子シグナルを検出し、自然免疫センサーであるtoll-like receptor(TLR)を誘導することで、有効な免疫細胞を働かせることができます。

 

さらに、脂肪幹細胞は血管新生促進や抗繊維化パラクライン効果があるので、慢性期になる肺組織の再生と繊維化に抵抗する役割があります。

 

ちなみに重症患者さんを対象に静脈内への脂肪幹細胞の投与が行われ、臨床効果と安全性は確認されています。約2年前の当院 再生医療のコラム「重症コロナ肺炎に脂肪幹細胞が有効」に詳しく紹介しています。ご興味ある方はぜひご一読ください。

 

というわけで脂肪幹細胞は、抗炎症作用や免疫調整能、抗繊維化作用があるため、急性期から慢性期まで広くコロナウイルス感染症に対して期待されているんですね。

 

ではまた!

 

(加藤基)

 

参考資料

Basiri, A., Pazhouhnia, Z., Beheshtizadeh, N. et al. Regenerative Medicine in COVID-19 Treatment: Real Opportunities and Range of Promises. Stem Cell Rev and Rep 17, 163–175 (2021). https://doi.org/10.1007/s12015-020-09994-5

 

炎症誘発性サイトカインの概要 Thermo Fisher Scientific HP

https://www.thermofisher.com/jp/ja/home/life-science/cell-analysis/cell-analysis-learning-center/immunology-at-work/proinflammatory-cytokines-overview.html#role

 

 

さて、前回から始めました最前線シリーズ

今日は脂肪幹細胞を用いた再生医療の最前線にアプローチしてみたいと思います。

 

脂肪幹細胞は前回のお話でも出てきたように、脂肪にある、だいたい何にでもなれてしまう 赤ちゃんのような細胞です。さまざまな治療に用いられているのですが、中でも細胞が出す分泌物が重要と言われています。サイトカイン、ケモカイン、炎症因子、成長因子、エクソソーム、プロテインなどなどさまざまなものを分泌しますが、それぞれが細胞増殖や移動、分化開始や免疫細胞の活性化などの役割を担っています。いわばメッセージを出している、ということですね。赤ちゃんがポンっと大人の中に放り込まれて泣き出すと、なんとかしなきゃと周りの細胞たちが活発になって、全体の雰囲気が活性化する、なんていったところでしょうか。

 

近年はこの治療法をさらに進化させるために、組織工学と呼ばれる、最新の技術を用いた素材が組み合わされて、治療に応用することが期待されています。いろいろなものがその材料になるわけですが、中でもポリエチレングリコール(PEG)は安全性が高いことで有名です。コロナワクチンを溶かす液や化粧品などにも広く使用されていて、皆さんの近くに溢れている便利素材です。

 

このPEG、ちょっと配合を変えることでいろんな新しい素材を作ることができるんで、目的に合わせた安全な素材を作りやすいんですね。というわけで、脂肪幹細胞を用いた治療にもPEGが応用されています。

 

脂肪幹細胞は人からとってきて、シャーレの上で増やして、人に返すという3段階ありますが、この増やす(培養)ところ、人に返す(投与)ところで主に使われます。培養中に失われる多くの分泌物質を保つことに有益だったり、投与されるときに細胞が長く生きるように、うまく生着するように、活用されています。まだまだ実験段階ですが、今後はさまざまな方面でバイオマテリアルを用いた幹細胞治療が進むことが予想されます。

 

より便利に、より安全に。医療は進み続けているんですね。

 

ではまた!

 

(加藤基)

 

参考資料

Han, Yu, et al. "Mesenchymal stem cells for regenerative medicine." Cells 8.8 (2019): 886.

 

Wechsler, Marissa E., et al. "Engineering the MSC secretome: a hydrogel focused approach." Advanced healthcare materials 10.7 (2021): 2001948.

 

春がやってきました。暖かい陽気に、気持ちは一新。

 

今日はリンパ浮腫の最前線 シリーズ第一弾として、脂肪由来幹細胞の基礎研究に関する話をします。研究・実験を通じて、様々なことがわかってきています。まさにその最前線は驚きに溢れています。

 

脂肪由来幹細胞?と思われるかた、私もそうでした。簡単に言いますと、お腹などの脂肪にある、だいたい何にでもなれてしまう 赤ちゃんのような細胞です。詳しくお知りになりたい方は、当院のHPをご参照ください。

 

本日紹介するのは、2009年 米国ハーバード大学からの報告です。Circulationという循環器系を代表するような一流の英文雑誌に掲載されています。この雑誌、ランキングなどをみるとだいたい医学系雑誌のトップ10くらいの常連です。

 

さて、内容ですが、ネズミ(マウス)のシッポの皮膚をくるっと一周切除すると、がんなどの手術後におきたリンパ浮腫に似た状態が作られます。そこに特殊な環境で培養した脂肪由来幹細胞を注射すると、なんと症状が軽快した、という素晴らしい研究成果です。

 

実際に浮腫が良くなった状態では、リンパ管造影検査を行うと、浮腫のもとになっている外科的な切除部位を超えて健常なところのリンパ管が造影されます。一方で治療を行わなかったネズミでは、造影剤が浮腫の部分に止まってしまって、体の中心側に流れませんでした。つまり、脂肪由来幹細胞の注射によって、リンパ機能が回復したことを示しています。

 

もちろん浮腫が軽快した部分について細かい評価も行っていて、良くなったネズミの治療を行った部分では、治療後にたくさんのリンパ管が新しく形成されていました。

こういうところ、研究・実験の良さだと思います。実際にどうなってんの?ほんまに治療がきいたんかいな?という質問にズバッと答えを出してくれています。

 

もともとリンパ管ができるのは血液内に循環している骨髄由来幹細胞(骨の中にある骨髄からできた、幹細胞ということです)がリンパ管の元になる、ということが知られていて、それを脂肪由来幹細胞(脂肪からできた幹細胞)でもできるんじゃないの?と考えて、研究してみたらうまくいったようです。

 

最新の発見から10年を経て、今では人に対しても応用されています。リンパ浮腫に対する治療として様々なものがありますが、注射でよくなることができれば、とてもいいと思いませんか?

 

研究って原因と結果を突き詰めるだけに、結果がシャープですよね。

わかったこと、できるようになったこと、が積み重なって便利な今の時代があるってことを改めて感じました。

 

ではまた!

 

(加藤基)

 

参考資料

Conrad C, Niess H, Huss R, Huber S, von Luettichau I, Nelson PJ, Ott HC, Jauch KW, Bruns CJ. Multipotent mesenchymal stem cells acquire a lymphendothelial phenotype and enhance lymphatic regeneration in vivo. Circulation. 2009 Jan 20;119(2):281-9. doi:10.1161/CIRCULATIONAHA.108.793208. Epub 2008 Dec 31. PMID: 19118255.

 

【Drもとい連載コラム】29. メス

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本ブログの要約

外科手術で使用される「メス」の歴史と進化について紹介されています。​「メス」という言葉はオランダ語の「mes」に由来し、英語では「scalpel」や「knife」と呼ばれます。​古代トルコやエジプトでは黒曜石を加工したメスが使用されており、現代では使い捨てメスや電気メス、ウォータージェットメス、レーザーメスなど多様な種類が存在します。​特に眼科手術やリンパ管静脈吻合術では、精密で切れ味の良い使い捨てメスが用いられています。​外科手術の発展とともに、メスも進化を遂げてきました。

 

とある知り合いの中学生に職業を聞かれて、外科医と答えたら「メス!」と掌を出されました。あの、私、どちらかと言うと、受け取る方なんですけど。

 

さて、このメス。実は英語じゃないって知ってましたか?日本でこそ有名な言葉ですが、オランダ語の「mes」が幕末に定着した言葉だと言われています。ちょうど西洋医学が日本に入ってきた時代。蘭学の影響が残っているんですね。英語では「scalpel(スカルペル)」や「knife(ナイフ)」と呼ばれます。

 
紀元前2100年以上前、トルコの集落からは、黒曜石を鋭利に加工して切れ味よく作成した医療用メスが発見されています。また、古代エジプトのパピルスにはさらに小型化されたメスが記録されており、脳外科手術などに使用されていたそうです。
 
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メスは長い間、同じものを研磨して繰り返し使用されていました。昭和中〜後期ごろから感染や衛生面での問題が指摘されるようになり、使い捨てメスに対する開発が進み、今では使い捨てメス、または刃の部分だけが使い捨てになっているメス刃が一般的となっています。

 

昭和初期には、大学病院などの大きな病院には研磨室が備え付けられていて、研師(とぎし)による研磨が日常的に行われていたとのこと。かの有名な医学漫画「ブラック・ジャック」に、マントの中にたくさんの刃付きメスを隠し持っていて、忍者が手裏剣を投げるようにメスを投げるシーンがありました。使い捨てでなかった当時の医療を想像させます。令和版ブラック・ジャックは、小型化した使い捨てメス刃をポケットの中に隠し持ち、指先で弾いて的に当てるのかもしれませんね。まるでスパイのようです。

 

さらに細かいものを、必要なだけ切開したいと言う要望に応えるように、眼科の白内障手術などで使用される精密メスが開発されています。使い捨てですが手持ちの部分と一体型になっています。リンパ管静脈吻合術の際にリンパ管へ切開を加える、などで使用することがありますが、非常に切れ味が良く、安心感があります。

 

その他、以前コラムでも取り上げました、高周波電流を用いて止血ができる電気メス。水流を使って汚い組織を薄く削ることなどが可能なウォータージェットメス。レーザーを使って必要な部分だけを止血しながら切開できる、レーザーメスなど、様々に応用された「メス」が出てきました。

 

「あれば切る、なければ作るの、外科心」と若い時に教えてもらったことがあります。切る、と言う非常に大事な作業のためにメスも発展してきたんですね。まさに外科発展の歴史を見るようで面白いです。今後、何が切れるどんなメスが出てくるのでしょうか。

 

ではまた!

 

(加藤基)

 

参考資料

 

メス wikipedia

https://en.wikipedia.org/wiki/Scalpel

 

白内障LAB

https://www.hakunaisholab.or.jp/study/kai/

 

FAQ

Q1: 「メス」という言葉の由来は何ですか?

A1:「メス」はオランダ語の「mes」に由来し、日本では幕末に西洋医学が導入された際に定着しました。英語では「scalpel」や「knife」と呼ばれます。
 

Q2:現代のメスにはどのような種類がありますか?

A2:現代のメスには、使い捨てメス、電気メス、ウォータージェットメス、レーザーメスなどがあり、手術の種類や目的に応じて使い分けられています。
 

Q3:精密な手術で使用されるメスの特徴は何ですか?

A3:眼科手術やリンパ管静脈吻合術などの精密な手術では、切れ味が良く、安心して使用できる使い捨ての精密メスが用いられています。
 
 
<記事更新:2025年5月5日>

手術室の扉が開くと、両手を胸の前にあげた教授が立っていた。気合の入った眼を見て、スタッフはゴクリと唾を飲み込む。誰もが今日は一味違う手術になると覚悟した。

無影灯が煌々と光る。「さあ手術を始めよう」・・・

 

医療ドラマでありそうなシーンの一幕ですが、ここで登場する無影灯(むえいとう)。読んで字のごとく、影を作らないあかりです。手術から連想されるものランキングをとると、5位以内に入ること間違いなしと思います。さて、この無影灯、今のようなものになるまでどのような変遷を遂げてきたのでしょうか。

 

まずは術野を照らす光源について歴史を辿ります。

1850年代、外科医は天井の四隅に鏡を設置し、太陽光を反射させて手術を行なっていました。時間帯や天候に左右され、状況は非常に苦しかった。ロウソクを光源としていた時代もあったようです。1875年に実用的な白熱電球が発明され、1900年代になるとさらに安定性の高いタングステン製フィラメントが登場し、手術室も一変します。1960年代に入り、ハロゲンガスを用いたランプが登場すると、現在の無影灯に遜色ない明るさが得られるようになりました。体育館に使われている水銀灯やさらに明るいものも開発されてきましたが、あまりに明るすぎても外科医の目は疲れるもの。2010年以降、今ではLEDを使うのが一般的になりました。

 

光はまっすぐ進みますので、影を作らないための工夫も無影灯の歴史を知る上ではとても大切です。もともとは単灯式と呼ばれ、中央に光があってそれを半球状の反射板になる覆いで反射させることで、明るくしたいところへ様々な角度で光が当たるようにしました。これが光源である電球も明るくなってきた1950年代頃より、位置が違う複数の電球を使って照らす、多灯式が開発され、今では主流になっています。

 

暗いところで手術をすると、外科医は疲れます。実際に手術室の照明が500 lx(ルクス)前後では目が疲れやすく、一般的に1,000 lx前後に設定されています。無影灯を使うと術野(手術をしている部位)は10,000~100,000 lxまで明るくなります。ルクスってなんじゃいという感じですが、ざっくりいうと明るいオフィスが500 lx、パチンコ店内が1,000 lx、よく晴れた時の太陽光 100,000 lxと言ったところです。街灯の下は100 lxくらいなので、それよりは随分明るいことがわかるかと思います。逆に検査室などは少し暗めでも大丈夫ということで大体300 lxくらいが一般的です。

 

無影灯一つとってみても、時代の変遷とともに様々な進化を遂げています。そういえば好きだったドラマ「白い巨塔」は、1967〜2019年の50年あまりの間にほぼ10年ごと、日本だけで合計5回もリバイバルされています。無影灯も手術室もどんどん新しいものに変わっていったこと、見ていて気付きました。これから医療ドラマをご覧になる際には、小道具?にも目を向けていただくと面白い発見があるかもしれません。

 

ではまた!

 

(加藤基)

 

参考資料

 

INSPITAL HP

https://www.inspital.com/en/news/the-history-of-surgical-lamps

 

印西市立印旛医科機器歴史資料館HP

https://ikakikai-hozon.org/exhibits/department/cat-r/cat-rd/#:~:text=%E5%A4%A7%E6%AD%A39%E5%B9%B4%EF%BC%881920%E5%B9%B4,%E8%A3%BD%E9%80%A0%E3%82%92%E9%96%8B%E5%A7%8B%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82

 

 

電気メス wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%84%A1%E5%BD%B1%E7%81%AF

 

 

Syngroa HP

https://www.synqroa.co.jp/2019/09/02/%E5%8C%BB%E7%99%82%E7%85%A7%E6%98%8E%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2%EF%BC%92/

 

鈴木敏弘 手術室の照明環境について 医機学 2015; 85(6):23-26

 

梅の花が咲き始め、次第に春が近づいているのを感じます。皆様いかがお過ごしでしょうか。

 

電気メスとは

以前、縫合糸の歴史についてコラム記載しましたが、身内から好評でしたので今日も歴史シリーズで進めていこうと思います。本日は電気メスです。

医療ドラマでもよく出てきますし、皆様も聞いたことくらいはあると思います。現代の外科医の必須アイテムと言ってもいいかもしれません。われわれ、リンパ管静脈吻合術の手術でも毎回使用しています。電気の力ですぐに止血できるし、組織を切り開いていくメスのような働きもできる、という点で非常に便利な道具です。

 

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電気メスの原理

電気メスは高周波電流を使用しています。電気における周波はプラスとマイナスが入れ替わる頻度のことで、簡単にいうと低周波だとゆーっくりビーリビーリとなるのに比べて、高周波ではビリビリ ビリビリとなります。1秒間に何回振動が繰り返されるか、をHz(ヘルツ)であわらし、日本では概ね西日本が60Hz, 東日本が50Hzです。で、本題に戻りますが、電気メスはなんと300k~5M Hz。ざっと10,000倍くらい違います。あまりに高周波すぎて電圧が高くても人体は感じず感電もしない、ということのようです。

 

電気メスの歴史

もちろん石器時代にこのようなものがあるわけではなく、電気が発見されて、手術で応用できるんじゃないかと考える人がいて、発明されてきた わけですが、その歴史に迫ってみたいと思います。

始まりは1890年、高周波電流を生体組織の止血に応用したことと言われています。その後、1926年、米国のマサチューセッツ工科大学 工学博士W.T.ボビーが電気メスを開発。これを応用して、同年脳外科医により電気メスを用いた世界初の外科手術が行ハーバード大学でわれました。執刀医は、Cushing教授。脳神経外科の父と呼ばれることもあります。「外科医の手袋〜愛の物語〜」で紹介した、外科ゴム手袋の創始者ハルステッド教授の弟子で、1932年にCushing症候群を報告していることでも有名です。つながるものですね!

 

さて、アメリカでの初報告から下ること4年。1930年に日本で初めて電気メスが開発されます。そして1935年、日本で初めての電気メスを用いた外科手術が行われます。これも脳外科手術でした。しかし当時の電気メスは真空管を使用しており、温まるまで出力が安定しなかったとのこと。革新的な機器でも不便さはあったんですね。

 

電気メスはなぜ、手術になくてはならない存在になったのか?

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その後1965年にはスイッチONで即座に使用できるトランジスタ式の電気メスが登場し、日本では1977年に初めて販売されています。今では当たり前に使用されており、なくてはならない医療機器の一つと言っても過言ではありません。手術中の出血を大きく減らすことができ、安全な医療に大きく貢献しています。

 

当たり前って、すごいことだなと改めて思います。

いま当たり前になっていることが当たり前ではなかった時代を想像し、どうやっていまの当たり前ができてきたのか。そんなことに思いを馳せるだけでも、すごく面白いなあと思います。きっと50年、100年たった頃、今の医療を「そんなことやってたの?まさか!」と思う人たちがいるんでしょうね。そしてこと私としては現代の一員として、そんな未来に一歩でも近づくお手伝いができればいいなあと思う次第です。

 

ではまた!

 

(加藤基)

 

参考資料

印西市立印旛医科機器歴史資料館HP

https://ikakikai-hozon.org/exhibits/department/cat-r/cat-rc/#:~:text=1890%E5%B9%B4%E3%80%81%E9%AB%98%E5%91%A8%E6%B3%A2%E9%9B%BB%E6%B5%81%E3%82%92,%E6%89%8B%E8%A1%93%EF%BC%89%E3%82%92%E8%A1%8C%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82

 

電気メス(wikipedia)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E6%B0%97%E3%83%A1%E3%82%B9

 

コラム 医工連携による発明 電気メスの誕生

https://ikousyou.com/20190915/

 

電波周波数地域 SHARP HP

https://jp.sharp/support/info/info_hz_1.html

 

小野哲章 電気メスの原理と安全対策 体外循環技術 1984 vol,10 no.2

電気メスの原理と安全対策 (jst.go.jp)

 

<記事更新:2024年2月26日>

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