2020年7月アーカイブ

夜のトイレはむくみが原因

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夜間にトイレに行きたくなって目覚めてしまう。そんな悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか?

 

夜の頻尿と浮腫の関係

もし、就寝中2回以上尿意のために起きてトイレに行く場合は、夜間頻尿という症状になります。1回までは正常範囲です。

 

夜間品用の原因となる足のむくみ

この夜間頻尿、実は足のむくみが原因になることがあります。

通常、足のむくみは日中に重力の影響により発生します。この状態で就寝すると足に溜まった水分が心臓の方に流れて血管内にもどり、循環する血液量が増えて腎臓から濾過されて出てくる尿量も増えるんですね。

 

高齢者における夜間頻尿の原因

高齢者の夜間頻尿の原因となり得る症状について、Vaughanらは下記の病態をあげています(文献1)。
また、リンパ浮腫の初期症状として夜間頻尿が出現するという報告もあります(文献2)。
 
240422_toilet.jpg
 

高齢者の夜間頻尿の原因

過活動性膀胱関連
-前立腺肥大
-過活動性膀胱
-薬剤の副作用
-腎結石・膀胱結石
 
頻尿および夜間頻尿関連
-鬱血性心不全に伴う利尿治療
-慢性腎不全
-コントロール不良の糖尿病
-下肢浮腫
-飲水過剰
-睡眠時無呼吸
-尿崩症
 
睡眠障害関連
-睡眠時無呼吸
-レム睡眠行動障害
-むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)
-周期性四肢運動障害 
-シフト勤務睡眠障害
 
 

 

浮腫からくる夜間頻尿の対策

むくみが主な原因で夜間頻尿となっている場合、頻尿の治療方法は浮腫の治療と同じです。静脈瘤によるむくみならば、弾性ストッキング着用と血管内レーザー治療、リンパ浮腫によるむくみならば、弾性ストッキング着用とリンパ管吻合術(LVA)が必要ですね。LVAをすると浮腫の水分が吻合した静脈から循環系にもどって一過性に尿量が増えることもありますが、いずれおさまります。

 

<記事更新:2024年4月22日>

 

(文献)

1. Sleep Med Clin. 2018 Mar;13(1):107-116. doi: 10.1016/j.jsmc.2017.09.010. Epub 2017 Dec 8.
Sleep and Nocturia in Older Adults.
Vaughan CP(1), Bliwise DL(2).

2. Am J Med. 2010 Mar;123(3):e3-4. doi: 10.1016/j.amjmed.2009.09.028.
Nocturia: an uncommon presentation of lower-limb lymphedema.
Cagnati P, Colombo BM, Gulli R, Russo R, Puppo F, Boccardo F, Campisi C, Murdaca G.

 

人工呼吸器を要するコロナ肺炎に脂肪由来幹細胞を点滴し、有効性を認めたという報告がされました。

 

以下、要約です。

 

「機械的換気を必要とする重症SARS-CoV-2肺炎患者に対する脂肪由来間葉系幹細胞の治療法:概念実証試験

背景

機械的人工呼吸を必要とするCOVID-19の重症例における有効な治療法の開発が求められている。我々の目的は、脂肪組織由来間葉系幹細胞(AT-MSC)の投与がこれらの患者に安全であり、有用である可能性があるかどうかを判断することであった。

方法

侵襲的機械換気下にある13人のCOVID-19成人患者で、以前に抗ウイルス剤および/または抗炎症剤(ステロイド剤、ロピナビル/リトナビル、ヒドロキシクロロキンおよび/またはトシリズマブなどを含む)による治療を受けたことのある患者を、同種AT-MSCで治療した。10人の患者に2回投与し、2回目の投与は1回目の投与から中央値で3日後(IQR-1日)に投与した。2人の患者は1回の投与を受け、もう1人の患者は3回の投与を受けた。1回の投与あたりの細胞数の中央値は0.98×106(IQR 0.50×106)AT-MSC/体重kgであった。細胞注入に関連する潜在的な副作用と臨床転帰を評価した。解析されたその他のパラメータには、イメージング、分析、炎症性パラメータの変化が含まれている。

調査結果

AT-MSCの初回投与は、機械的人工呼吸後、中央値7日(IQR 12日)で行われた。細胞治療に関連した有害事象はなかった。初回投与後の経過観察期間の中央値は16日(IQR 9日)で、9人の患者(70%)に臨床的改善が認められた。7人の患者は抜管してICUから退院したが、4人の患者は挿管したままであった(2人は人工呼吸と放射線学的パラメータに改善が見られ、2人は安定した状態であった)。2名の患者が死亡した(1名はMSC治療とは無関係の大量の消化管出血によるもの)。AT-MSCによる治療は、炎症性パラメータの低下(C反応性蛋白質、IL-6、フェリチン、LDH、d-ダイマーの低下)とリンパ球の増加、特に臨床的に改善した患者でのリンパ球の増加をもたらした。

解釈

小規模な症例シリーズにおいて、機械換気下での重症COVID-19肺炎13例を対象にAT-MSCを静脈内投与したところ、有意な有害事象は誘発されず、その後ほとんどの被験者で臨床的・生物学的改善がみられた。」

 

上記はLancet系オープンジャーナルの報告です。

https://www.thelancet.com/journals/eclinm/article/PIIS2589-5370(20)30198-X/fulltext

吉松医師のYoutube動画「リンパ浮腫について」が癌研有明病院から公開されました。

癌研有明病院の矢野先生も出演されています。

動画リンク:https://m.youtube.com/watch?v=kVg_STAWRGo

癌研有明病院形成外科HP:https://www.jfcr.or.jp/hospital/department/clinic/general/plastic_surgery/staff.html

 

受精卵から胎児、赤ちゃんになって生まれるまで、どのようにしてリンパ管が発生するのか。これは長年の疑問でした。今も研究者が日々研究を重ねていますが、実はこれ、少し前からかなりわかるようになってきたんです。リンパ管研究の根幹にも関わる話なのですが、何が変わったことで進んだと思いますか?

 

それは、抗体です。

リンパ管がここにあるぞ、ここにはないぞ、っていうことをはっきりさせるには病理検査が必要です。取ってきた組織(体の一部)を特別な液体で染色すると、リンパ管だけがはっきりわかる、というリンパ管特異的な抗体の発見がキーだったんですね。

 

これをもとに研究は大きく回り始めます。

抗体が発見される以前は、豚の胎児(と言っても生まれるよりもずっと前)を取ってきて、インクを注射すると、袋のように固まって見えるところが首などを中心に何箇所かみられる。また別の豚の胎児で、先ほどのものより数日育ったものをまた取ってきて、同じようにインクを入れると、今度は袋を中心にリンパ管のような網目の構造が見えた。だから、リンパ管は原始リンパ嚢と呼ばれる袋から発生するんだ!という説がどの教科書にも載っているくらい、有名な説です。(1902年, Sabin)

 

いやいや、リンパ管は脂肪などの間質と呼ばれる皮膚の下の組織から発生してきて、後から静脈とつながるんじゃないの?という説を唱えた人も出てきます。(1910年, Huntington, McClure)とはいえSabinさんの説はとても有力とされ、一般的でした。

 

どっちなんですかーという疑問に答えが出たのは先ほど述べたように抗体が発見され、より詳しく発生の段階がわかるようになってからです。(1995年, VEGFR3の発見)

 

結論としては、末梢リンパ管は静脈から発生する、というのが現在の説となっています。これに関するreview(総まとめ)の論文が、少し古いですが、本日紹介するLymphatic vasculature development (Nature immunology review, 2004)です。

またこの内容を踏まえてわかりやすく日本語で解説しているものとして、女子医大の江崎先生の文献も加えておきます。(東京女子医大誌, 2017)

 

静脈の袋ができて、一部にリンパ管になりますよって信号が発せられる部分ができる。そこにリンパ管になれっていう指令が入り、リンパ管が独立して分化していく、というものです。この発生段階を4段階に分けて説明しています。段階といっても、研究されているマウス(小さなネズミ)での実験では非常に短い期間に起こっており、だいたい受精卵から9-12日目の出来事とされています。マウスは20日くらいで赤ちゃんとなって生まれてきますので、人が10ヶ月で生まれてくることにそのまま当てはめてみると、だいたい1.5ヶ月くらいの出来事と言えるでしょうか。長いのか、短いのかわからなくなってきました。

 

発生段階ではリンパ管はもとになる静脈から発生するのですが、成人でのリンパ管新生ではリンパ管からしか起こらないとされ、詳細はわかっていません。今後の発展が期待されます。

 

現在ではリンパ管の成熟に関する研究は、特にリンパ管だけに特徴的(特異的)なProx1の機能が弱くなった(ノックアウトした)マウスやら、ゼブラフィッシュ(ドクターフィッシュのような少し透明な小さい魚)やら、様々な動物を使って研究されています。

ちなみに抗体、なかでもPodoplanin (D2-40とも呼ばれます)は、患者さんの検査として実際に使われており、癌の性質を調べる時などにしばしば使われています。

 

このように実際の患者さんに応用できる発見がどんどんあるといいですね。

 

ではまた!

 

(加藤基)

 

 

参考文献

Lymphatic Vasculature Development. Guillermo Oliver. Nature immunology review 4: 35-45, 2004.

循環系の基礎と臨床 (5)リンパ管発生 江崎太一 東京女子医大誌 87(5): 135-145, 2017

 

 

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