2022年2月アーカイブ

少し日差しの暖かい日が出てきたように思います。皆様いかがお過ごしでしょうか。

 

さて本日は、リンパ浮腫の話です。とは言っても臨床のことは様々言われているので、一般的には目にすることが少ない(かもしれない)、研究・動物実験の話です。

 

ヒトの病気を解明するため、治療法を開発するために、さまざまな方法が取られています。シャーレの上で培養した細胞を使ったり、数学的な計算に基づいて予想したり、すでに治療された方のことを後から調べて治療効果はどうなのかを検証したり。なかでも動物実験は、それなくして今の医療の発展はありえないほど、現在の科学における重要なものの一つです。

 

生きた動物を使いますので、もちろんのことですが、他の方法に置き換える、必要な最小の動物数にする、苦痛をできるだけ減らすように努力する、などが基準として定められています。3Rとして有名な内容ですが、1959年に提唱され、今も研究者はこれを守って実験しています。止むを得ず使用するに限っている、と言うことです。

 

さて、リンパ浮腫の病態を理解すること、治療法を開発すること、においても動物実験は重要な役割を果たしてきています。ブタ、犬などが当初使用されていましたが、近年はネズミを使うことが多くなっています。

 

特にネズミの尻尾を使った実験は、21世紀になって数多く報告されるようになり、近年最もよく使われるモデルの一つです。尻尾の皮膚の一部をくるりっと一周切り取ると、切り取った部分よりも先っぽ側に浮腫が起きて、リンパ浮腫に近い状態を起こします。この”むくんだ”尻尾を使って、リンパ管がどのようにつながってくるか、治療効果はどうかなどの検証が行われます。

 

しかしどのモデルも完璧なものはなく、ネズミの尻尾だとリンパ管は極めて細いため、リンパ管静脈吻合術などが人の手足のようにはできず、全く同じように評価できない、などの問題点もあります。

 

将来的に動物実験など必要ない社会が達成できれば、それに越したことはありません。しかしこれら科学的な検証の積み重ねが今の高度な医療を作ってきたという現実も無視できず、実験の結果や動物愛護の重要性に真摯に向き合いつつ、医療に生かしていくことが大切だと考えるこの頃です。

 

ではまた!

 

(加藤基)

 

参考資料

リンパ浮腫の動物実験モデルに関する総論

Hsu JF, Yu RP, Stanton EW, Wang J, Wong AK. Current Advancements in Animal Models of Postsurgical Lymphedema: A Systematic Review. Adv Wound Care (New Rochelle). 2021 Aug 27. doi: 10.1089/wound.2021.0033. Epub ahead of print. PMID: 34128396.

 

動物実験 wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8B%95%E7%89%A9%E5%AE%9F%E9%A8%93#:~:text=%E5%8B%95%E7%89%A9%E5%AE%9F%E9%A8%93%EF%BC%88%E3%81%A9%E3%81%86%E3%81%B6%E3%81%A4%E3%81%98%E3%81%A3%E3%81%91%E3%82%93%EF%BC%89%E3%81%A8,%E7%A0%94%E7%A9%B6%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AB%E8%A1%8C%E3%81%86%E3%80%82

 

 

コロナ第6派、早く収束して欲しいと願うばかりです。皆様いかがお過ごしでしょうか。

密を避けるように関東近郊へ転居される方が増えているといいます。時代や価値観の変化を感じるこの頃です。

 

さて本日は、ある遅咲きの医師が、大都会で医療を変える大きな働きをしたあと、惜しまれながらも理想を叶えるため故郷に帰った。そんな男のストーリーです。

 

ルネ・ファバローロはアルゼンチンで医師をしていました。大草原の小さな町 パンパで開業していたところ、一念発起し最新の心臓外科学を学ぶため、病院を処分し妻と二人で渡米します。当時から最先端の医療を提供していたクリーブランドクリニックのエフラー医師を尋ねると、無給で良いから働かせてくれと懇願します。エフラー、ときに38歳。一からのスタートです。心臓外科は今でも訓練期間が長いことが一般的ですが、当時のことを思うと遅すぎる年齢です。

 

しかし彼は頑張りました。毎晩、心カテーテル室に保管されている膨大な冠動脈造影フィルムを見て、読影術を必死で学びました。

 

5年が経過した時、快挙を成し遂げます。今でも死因2位の心疾患、中でも突然死を起こす心筋梗塞は大きな問題となっていました。この病気を解決すべく、心臓を栄養する冠動脈の閉塞した部分を切り取り、代わりに本人の足からとってきた伏在静脈を移植して血流を再建し、救命できたのです。さらに3年後の1970年には今日の術式に近い、内胸動脈を用いた手術にも成功しています。

 

これで多くの人が救われる、とアメリカでの将来も約束された状態であったのに、なんと彼は突然辞表を提出します。どうしても上司が納得しなかったため、置き手紙を残し、ブエノスアイレスに帰りました。その手紙にはこう綴られていたと言います。

 

「あなたもご存じのように、ブエノスアイレスに真の心臓外科はありません。金持ちなら、アメリカに渡って治療を受けられます。金持ちでなくても、 自分の家を持っていれば、それを売却してアメリカに渡る人もいます。しかし、どうしてもアメリカに渡れない人は、ゆっくりと、しかし確実にやってくる死を 待つしかないのです。私は、残されたあと三分の一の人生をブエノスアイレスでの心臓センター設立に賭けるため、母国に戻ります」

 

さて論語の一節に、「子曰、里仁爲美。擇不處仁、焉得知。」と言うフレーズがあります。ざっくり言うと、仁(人々への思いやり)あるところに住むのが良い。と言う意味です。

 

冠動脈手術は、私が専門としているリンパ浮腫の治療に直接の関係はありませんが、近いものがあります。リンパの流れを再建する外科治療(バイパス術)はリンパ管静脈吻合術と呼ばれ、当院でも施行しております。

 

難題に正面から向き合ったこと、自分の今の年齢に近い歳で再スタートを切ったこと、天命を意識し、己の名声のためではなく、人々のために尽くした。彼の生き様に頭が下がります。

 

ではまた!

 

(加藤基)

 

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The Famous People Rene Geronimo Favaloro

https://www.thefamouspeople.com/profiles/ren-gernimo-favaloro-419.php

より引用

 

参考資料

 

ある心臓外科医からの手紙

https://www.vivo-plan.com/m3-com%E6%8E%B2%E8%BC%89-%E5%8C%BB%E7%A5%9E%E3%81%AE%E5%BE%AE%E7%AC%91%E3%81%BF/%E3%81%82%E3%82%8B%E5%BF%83%E8%87%93%E5%A4%96%E7%A7%91%E5%8C%BB%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE%E6%89%8B%E7%B4%99/

 

医療の挑戦者たち 25 テルモ株式会社HP

https://www.terumo.co.jp/challengers/challengers/25.html

 

冠動脈大動脈バイパス移植術

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%A0%E5%8B%95%E8%84%88%E5%A4%A7%E5%8B%95%E8%84%88%E3%83%90%E3%82%A4%E3%83%91%E3%82%B9%E7%A7%BB%E6%A4%8D%E8%A1%93

 

 

 

当院木曜日のリンパ浮腫外来担当の吉松英彦医師がアメリカマイクロ再建外科学会の2022年Godina Fellowに選ばれました。

これは再建外科分野におけるノーベル賞と称されているもので、初の日本人受賞者となりました。

【受賞情報】形成外科医長の吉松英彦医師がアメリカマイクロ再建外科学会の2022年Godina Fellowに選ばれました|お知らせ|がん研有明病院 (jfcr.or.jp)

 

吉松先生の長年のリンパ浮腫・マイクロサージェリーの研究および臨床における功績にたいする授与です。

当院で吉松先生の診察および手術をご希望になる場合は、木曜日の外来をご予約ください。

 

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